fc2ブログ










台風騒動記

台風の災害を皮肉と嘲笑交じりに描いた社会派作品。
台風騒動記 [VHS]台風騒動記 [VHS]
(1992/01/21)
佐田啓二

商品詳細を見る

「台風騒動記」(1956日)星3
ジャンル社会派・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 のどかな港町に台風が上陸した。町は大きな被害を受け、町会議会では政府の補助金を受けるために台風で倒れ損ねた木造小学校の取り壊しが決定した。生徒たちの目の前で無残に壊される校舎。それを女性教師・妙子は怒りに震えながら見つめた。その頃、議会では大蔵省から監査官が来るという知らせが入って慌てふためく。取り壊している所を見つかったらウソがばれてしまう。町長の妻・みえは、バス停から降りた大蔵省の役人を買収しようと、早速接待の席に連れだした。ところが、相手は役人ではなく新しくやってきた新任教師だった。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 台風に襲われた町を舞台に、補助金をせしめようとする役人たち、被害に苦しむ住民たちの姿を痛烈な風刺で描いた社会派ブラック・コメディ。

 「台風十三号始末記」というルポルタージュを元に山本薩夫が監督した作品で、いかにも社会派作家・山本らしい権力批判が感じられる映画である。直球過ぎる表現もあるが、良くも悪くも彼の資質が前面に出た作品となっている。

 尚、本作の元となったのは、1953年に愛知県南部を襲った台風13号の被害である。甚大な被害をもたらしたこの台風はその後の処理をめぐって様々な問題をもたらしたということである。それがここで描かれている町会議会のお家騒動である。これは正に「天災」というよりも人間の強欲が生んだ「人災」である。 ラストの「天災の後に来るものは人災である」というテロップは実に皮肉が効いている。そして、この言葉は、記憶に新しい東日本大震災に当てはめることもできよう。縦割り行政の悪癖が復興を足止めしてしまっているこの現状‥、今作を見て改めて憂えてしまう。

 映画は、私利私欲のために醜い争いをする町会議員たちの姿と、災害に苦しめられる住民たちの姿を交互に写している。割と楽観的に作られているが、これは娯楽性を重視した作り手側の割り切りだろう。確かに口当たりの良いドラマに仕上げられている。
 ただ、一方で山本監督の中では単なるコメディで終わらせたくない‥という意思があったのだと思う。権力に対する痛烈な批判が各所に見つかった。このあたりはいかにも山本節で、自らのプロダクションを擁して製作したという事情からもその意志が伺える。

 例えば、吉成と妙子が訪れる避難民キャンプのシーンは、今作で一番深刻に見れる場面である。災害の苦しみに晒される人々の姿、その一方で愚鈍な役人たちのやり取りが描かれる。これを見ると、一体何のための行政だ‥という怒りを通り越して、もはや虚しさしか覚えなくなってくる。

 逆に、最も笑えたのは、吉成が大蔵省の職員に間違われて様々な接待を受けるシーンである。ここでは彼と人気芸者・静奴のほのかな恋心も描かれており、この淡いロマンスは微笑ましく見れた。

 そして、今作で最も印象に残ったシーンは、中盤、吉成と妙子が教え子を連れて瓦礫の山と化した浜辺を歩く場面である。「でんでんむし」の歌を歌いながら歩く一行の姿が清浄さに溢れていて印象に残った。名声しか頭にない町長や利権を食い散らかす議員、お上に取り入ろうとする大人達。彼らが入る隙が一寸も無いほどに麗しいシーンとなっている。
[ 2013/08/31 02:00 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1167-d6e6a9d0