斬新な構成で描いたサスペンス作品。
「LOOK」(2007米)
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ) アメリカには至る所に監視カメラが設置されている。そして、毎日市民の行動は記録されている。今時の女子高生二人組はデパートで担任教師に色目を使っていた。レジ係の女性店員は上司からセクハラを受けていた。倉庫係は裏で女子社員たちとセックスを楽しんでいた。指名手配中の強盗殺人犯はパトカーに呼び止められて警官を撃って逃走した。深夜のコンビニ店員は暇を持て余して悪友とおしゃべりをしていた。ゲイの黒人カップルは妻に隠れてエレベータの中で不倫をした。様々な光景を記録していく監視カメラ。そして、強盗殺人犯の映像が全米中で話題になっていた時に第2の事件が発生する。
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(レビュー) オープニングにテロップが出てくるが、アメリカ人は普段生活する中で一日平均200回も監視カメラに撮られているそうである。この数字には驚かされる。日本でも街中や建物の中で監視カメラをよく見かけるが、さすがにアメリカほどではないだろう。200回という数字はちょっと想像できない数字である。
しかし、アメリカがこうなったのも何となく理解はできる。要するに、2001年に起こった同時多発テロの影響が確実にあるのだろう。安全を保障するために警戒を厳重にせざるを得なくなったのだ。これは彼らの”不安”の表れのような気がした。
”世界の警察”を標榜するアメリカ‥。そのアメリカが、国内にも監視の目を強化しなければならなくなったのは実に皮肉的と言える。
映画は、監視カメラに映し出される様々な人々の姿を捉えていく。全編、監視カメラだけの構成になっており、この斬新な作りには感心させられた。まるでドキュメタリーのように見れた。
ちなみに、同年に作られたブライアン・デ・パルマ監督作
「リダクテッド 真実の価値」(2007米カナダ)も記録映像だけで作られたフェイクドキュメンタリーだった。それと今作は同じ構造の映画になっている。
また、社会派的なテーマにも見応えを感じた。本来、監視カメラとは犯罪などの事件を監視するために設置される物である。しかし、監視が行き過ぎると、それは個人のプライバシーの侵害にもなる。治安維持のために、ある程度は認められるべきだが、その線引きは中々難しい。
現に、今作のカメラも虐め、殺人、不倫、強盗などを捉えていくが、それと同時に性癖や家族の内幕などのプライベートも捉えてしまう。もし自分が監視される側だったら決して気持ちのいいものではない。果たして、どこまでプライベートに干渉すべきなのか?その問題提示も今作から読み取れた。
映画は後半から、強盗殺人犯のサスペンスを中心に娯楽色が強められていく。前半に登場した事件と後半に登場する事件を上手く結びつけながらアップテンポに展開されており、中々面白く見ることが出来た。基本的にこの映画は、一つ一つのシーンをバラバラに構成しているので一見すると何のつながりもないエピソードに見える。しかし、この強盗殺人犯のエピソードのように、後半から全てのエピソードが複雑に関連付けられ、最後にはきちんと整理されていく。このあたりの構成は上手くできていて感心させられる。
尚、ラストの人を食ったオチも、映画を締めると言う意味では上手く決まっていると思った。こうしたさりげない演出が映画の後味を軽妙にしている。
難は中盤が少しだれることだろうか‥。ここで描かれるオフィス・ラブのネタには余り面白味が感じられなかった。よくあるネタであるし、全体のサスペンスを悪戯に中断させてしまっている。ここはサラリと流す程度で十分だった気がする。