ブラピが大活躍するゾンビ(?)映画。
「ワールド・ウォーZ」(2013米)
ジャンルホラー・ジャンルアクション
(あらすじ) 元国連調査員のジェリーは、今は引退して妻子と静かな暮らしを送っていた。いつものように自動車で子供たちを学校へ送っていた最中、突然街で暴動が起こる。謎の伝染病によって人間が次々とゾンビと化していったのだ。どうにか窮地を脱したジェリーたちは高層マンションに身を潜め、翌朝、米軍に救出された。そして、ジェリーはエージェントとしての腕を買われ、ウィルスの原因を究明する任務を負った。家族を置いて彼は韓国の米軍基地へ飛ぶのだが‥。
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(レビュー) 世界的ベストセラーをB・ピットが製作・主演を兼ねて作ったゾンビ・パニック映画。
昨今のゾンビは走るゾンビが主流である。本作のゾンビも走る!走る!陸上選手も真っ青という脚力を見せつけている(笑)。
思うに、この潮流は「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004米)や「28日後…」(2002英)あたりから始まったように思う。ただ、個人的にはジョージ・A・ロメロのゾンビ映画に愛着がある分、どうしても走るゾンビには未だに慣れない。第一、ゾンビは身体が腐敗しているのだから、そんなに猛スピードで走ったり、怪力で肉弾戦をするほどの体力は残っていないはずである。どうにも解せない‥。
もっとも、今作の場合は別に死体が暴れ回っているわけではない。あくまでウィルスによって感染した者が凶暴化して人を襲うのである。敢えてジャンル分けするなら、これはゾンビ映画というよりもパンデミック映画である。そういう意味では、前述の「28日後…」も正確にはゾンビ(生ける屍)映画とは言えないのかもしれない。
物語はB・ピット演じるジェリーが世界各地を飛び回ってゾンビ退治の手がかりを捜査していく‥という話である。正直、これ以外にドラマはほとんどない。一応、序盤から家族との愛情ドラマもお膳立てされているが、最後は取ってつけたように締め括られてしまっている。また、肝心のゾンビが発生した原因も究明されないまま終わっている。
wikiなどの記事によれば、今作は製作段階で脚本がたらい回しにされたということだ。それを知ると、この煮え切らないラストも何となく合点がいく。
本作は元々はC・イーストウッド監督の作品
「チェンジリング」(2008米)の脚本家J・マイケル・スラジンスキーの脚本で出発したそうである。ところが、その後に
「キングダム/見えざる敵」(2007米)の脚本家マシュー・M・カーナハン(あのJ・カーナハンの弟)に変更になる。それで撮影された完成版はパラマウントの経営陣を納得させる出来ではなかった。こうして映画の終盤はD・リンデロフによって書き直される。彼は同年に公開された
「スター・トレック イントゥダークネス」(2013米)でも脚本を担当していた。しかし、実際には彼は「スター・トレック~」と掛け持ちで、「ワールド・ウォーZ」までは中々手が回らなかったそうである。そこで、「LOST」でリンデロフと一緒にライターをしていた脚本家にも加わってもらい、ようやく完成までこぎつけた‥という次第らしい。
シナリオはリライトするこによって熟成される場合もある。しかし、製作資金の問題、スタッフ・キャストのしがらみから、実際には上手くいかない事の方が多いような気がする。正に今作の終盤もそれが透けて見えるような貧相な出来である。余りにも尻つぼみでカタルシスや感動が薄い。
果たして元はどういう結末だったのだろうか?おそらく、前のフッテージはお蔵入りだろう。いつか、日の目を見る日が来ればいいが‥。
一方、今作で面白く見れたシーンは2箇所ある。一つは前半部のパニックシーンである。ここはスケール感があって見応えが感じられた。また、後半のエルサレムのパニックシーンもアクション映えがして興奮させられた。走るゾンビが流行っているとはいえ、ここまで猪突猛進するゾンビは初めて見た。しかも、あれだけ大勢で責めて来られると、もはやゾンビというよりも津波と言った方がいい。怖いを通り越して何だか笑ってしまった。
笑いということで言えば、今作にはどうしても苦笑してしまいたくなるユーモアもあった。科学者の死、携帯電話のクダリ、ペプシコーラのネタ等は冗談がきつい。むろん確信犯的に笑わせようとしているのだろうが、シリアスな中に突然こうした冗談をかましてくるあたり。もしかしたら物凄く考えて作られているのかもしれない。