原作者自らが撮った正式な続編。
「エクソシスト3」(1990米)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) ある朝、川縁で黒人少年の他殺体が発見された。死体の首は切断されキリスト像の首に挿げ替えられていた。そして、左手の中指も切断され、右手には双子座のマークが彫られていた。事件を担当することになったキンダーマン警部は、15年前に起こった双子座殺人事件と全く同じ犯行であることに気付く。一方、15年前の悪魔祓いで死んだカラス神父が籍を置いていた教会で、同じ手口を使った第二の事件が起こる。犯行現場から採取された指紋は第一の事件とは別の物だった。更に、キンダーマンの親友、ダイヤー神父も何者かに殺されてしまう。キンダーマンは、事件の背後に恐るべき悪魔の存在を突き止める。
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(レビュー) 世界的大ヒットを記録したオカルト映画「エクソシスト」(1973米)の正式な続編。原作者であるW・P・ブラッティが製作・監督・脚本を務め、第1作の悪魔憑き事件の後日談を描いている。
全体的な印象としては、第1作の恐怖には及ばないものの中々の佳作だと思った。さすがに原作者本人が撮っただけあって、あちこちに第1作とのつながりや、シリーズ物ならではのこだわりが感じられる。単なる見世物ホラー映画に終わっていない。
物語前半は、キンダーマン警部が双子座の殺人鬼を追いかけるサスペンス劇になっている。冒頭の不穏な空気をまき散らした水死体発見のシーン、その後に続く第2の犯行、更には親友ダイヤー神父の謎の死と、ストーリーは畳み掛けるように展開されていく。そして、その合間にキンダーマンのプライベートのドラマが混入され、構成自体は抑揚が効いていて中々手練れていると思った。
そして、物語が中盤に入ってくると、いよいよキンダーマンは犯人につながる重要な手がかりを発見する。そこには過去の連続殺人事件が関係していた。ここから映画は一気にオカルト・テイストが出始め、クライマックスに向けて盛り上げられていく。
このように本作は、前半は殺人事件を追いかける推理サスペンス劇、後半は悪魔払いのオカルト劇になっている。ブラッティ監督は、この二つを不穏なトーンで結ぶ付けながら、見事に1本の作品としてまとめ上げている。
実は、彼は映画の脚本を多く手掛けているが、監督業はそれほど多くない。今作を含めたった2本しか撮ってなく、自分は彼の監督作品を今回初めて見た。そんなわけで余りデータはないのだが、今回見る限り彼のホラー演出は中々どうして。かなり上手いと思った。
例えば、夜勤の看護師が物音に気付いて薄暗い病室を訪ねるシーンがある。ロングショットで延々と写しながら張りつめた緊張感が演出されている。いわゆるスカシの演出も上手く効いているし、予想できない所から現れる殺人鬼の姿もショッキングだった。真面目な話、このシーンはホラー映画史に残るようなトラウマ級の怖さがある。
また、このようなドキッとさせる演出は、クライマックスのキンダーマン邸でも見られる。正に間一髪!という首切りシーンだ。ここも撮り方が少し変わっているせいでショッキングだった。
ただ、今作でショッキングだったシーンはこの2箇所くらいで、あとは静かに恐怖を盛り上げるJホラー的なタッチが横溢する。確かに地味は地味なのだが、本作は派手な見世物で怖がらせるスラッシャー映画ではない。この地味さが、良い意味で作品に重厚感をもたらしている。
Jホラー的と言えば、闇に対する執着も相当なもので、例えば教会の懺悔室のシーンや、精神病院の監禁部屋のシーンは、光と影を巧みに使いながら不気味に恐怖を盛り上げている。
また、S・キューブリックばりのシンメトリックな画面構図にも無機質的で冷え冷えとした怖さが感じられた。同様に、無人ショットの積み重ねにも職人技のような上手さが感じられた。
総じて、所々の演出には光るものがあった。
ただ、その一方で少々陳腐な演出も見らる。例えば、キンダーマンが見る悪夢シーンはスケール感たっぷりに描かれているが、全体のミニマムなトーンからすればどうしても違和感を覚えてしまう。また、天井を歩く老婆もどうかするとギャグのように映ってしまう。第1作のディレクターズ・カット版でもスパイダー・ウォークが話題となったが、それと同じ陳腐さを感じた。
キャストは、双子座の犯人を演じたブラッド・ドゥーリフの怪演を評価したい。彼のことは今まで意識したことはなかったが、B級映画やホラー映画への出演が多い俳優のようである。おそらくこの手のジャンルが得意なのかもしれない。
キンダーマン警部役はジョージ・C・スコットが演じている。元々この刑事は第1作にも登場していたキャラだが、その時にはリー・J・コップが演じていた。しかし、今作が製作された時にはすでに彼は亡くなっていた。そこでジョージ・C・スコットが新たにキャスティングされたということらしい。確かに見ようによっては似てなくもない。しかしながら、スコットの演技はどうにもエキセントリック過ぎて、所々で違和感を持ってしまう。何故ここでそんなにキレるのか?というような場面が幾つもあり、もう少し演技を抑制してほしかった。
他に、サミュエル・L・ジャクソンがチョイ役で出演している。どうやらキンダーマンの夢のシーンに出てたらしいのだが、自分には気付かなかった。