70年代のカルト作品を現代風にリメイク。
「ピラニア」(2010米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 観光客でにぎわう湖で毎年恒例の美女コンテストが開催される。地元大学生ジェイクはそれを観に行きたかったが、保安官をしている母ジュリーから幼い弟たちの面倒を見るよう釘を刺された。ある日、彼は撮影に来ていたポルノ映画監督にロケの案内を頼まれる。このチャンスを逃すものか‥。そう思ったジェイクは弟たちに小遣いを渡して撮影隊に同行した。更に、途中で鉢合わせになったガールフレンドのケリーも連れて行った。一方その頃、ジュリーは海岸で漁師の変死体を発見する。調査に乗り出すと奇妙な形をしたピラニアが発見される。
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(レビュー) 78年にJ・ダンテ監督が撮ったB級パニック映画「ピラニア」(1978米)のリメイク作。
オリジナル版はTVで見た記憶ががあるがまったく覚えていない。それくらい自分にとっては印象に残らなかった作品なのだが、それが現代に設定を移し替えて蘇った。何故今このB級映画がリメイクされたのか?その理由はよく分からないが、出来上がった物を見ると中々毒が効いていて面白い作品であった。尚、劇場公開時には3Dで上映されたが、今回は2Dでの鑑賞である。
監督はスプラッター映画「ハイテンション」(2003仏)で一躍注目を集めた新鋭A・アジャ。正直、「ハイテンション」は言うほど残酷描写が新鮮と言うほどでもなく、これまた中途半端な印象しか残らない作品だった。アジャ監督の演出家としての特質も余り見えず、よくあるB級ホラー映画という感じだった。しかし、「ハイテンション」は本国でヒットを飛ばし、それによって彼はハリウッドに招かれた。そして作られたのが今作である。
今回もB級映画らしい、こじんまりとした内容となっている。しかし、さすがにそこはハリウッドである。クライマックスのパニック・シーンは結構大掛かりな撮影で、予算や特撮もかなりかかっている。正にやりたい放題なグロ描写のオンパレードで、正直「ハイテンション」よりも”ハイテンション”だった。
しかも、変にジメジメとしていない所が良い。アメリカナイズされた軽いノリが全編に渡って貫き通されており、ある種バカ映画然とした面白さも感じられた。
そもそも、殺人ピラニアの犠牲となる人たちは、ほとんどがエロしか頭にないバカ者達ばかりである。例えるなら、成人式の会場で酒を飲みながら乱闘騒ぎを起こすような連中である。観る方としても彼らに感情移入できず、いくら酷い目に合っても陰惨な気持ちになどならない。これはアジャ監督の上手さである。予め、彼らの乱痴気騒ぎをプレマイズすることで、観客に同情の余地を与えないのだ。
しかし、ただ一人、黒人保安官の死だけには心を痛めてしまった。彼はパニックに陥る美女コンテストの会場で避難誘導をするのだが、バカな連中を守ろうとして死んでいく。実に浮かばれない最期であった。
シナリオは前半が水っぽいのが残念だった。主人公のジェイクが前に出ないタイプの少年なので、ストーリーに進展がない。また、彼とケリーの恋愛も淡泊にしか描かれておらず物足りなかった。ジェイクが行動を起こすのは後半のパニック発生以降である。ここからようやくドラマも動き出して、クライマックスまで面白く追いかけることが出来た。
また、ラストのオチも痛快で良かったと思う。得てしてこの手の映画の場合、恐怖の余韻を煽る傾向にあるのだが、今作はクライマックスの勢い、そのままにスカッとオチをつけている。秀逸である。
尚、最も笑ったのはポルノ映画監督の絶命の時の一言だった。お前は死ぬまでそれかよ‥という突っ込みを入れてしまった(笑)
キャストではC・ロイドやR・ドレイファスといった意外な面々が登場している。ロイドはともかく、ドレイファスは完全にネタ要員である。彼の今作での役名はマットである。当然、彼が「ジョーズ」(1975米)で演じた役名が想起される。作り手たちの遊び心が感じられた。