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嵐が丘

世界的名作を独特の感性で映像化。
嵐が丘 [DVD]嵐が丘 [DVD]
(2013/11/22)
松田優作、田中裕子 他

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「嵐が丘」(1988日)星3
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 鎌倉時代、山部一族の当主・高丸は子供たちと隠匿生活を送っていた。屋敷の離れには下人の鬼丸が住んでいて、長女の絹は彼に淡い恋心を抱いていた。そんな二人の関係を高丸の長男・秀丸は嫉妬する。そして、自分を見つめるための旅に出た。一方、絹にも非情な運命が背負わされていた。成人した彼女は古いしきたりに習って巫女になることが運命づけられていたのである。しかし、彼女は山部一族と長年対立する西の荘の当主・光彦に嫁ぐと言ってこれに反発した。そして、家を出ていく前夜、絹は鬼丸と愛し合った。誰にも打ち明けられぬ秘密を抱えたまま、彼女は西の荘へと旅立っていく。
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(レビュー)
 世界的に著名な同名原作を、日本の中世時代に舞台を移し替えて製作した禁断の愛憎ドラマ。

 監督・脚本は吉田喜重。この映画化は彼が長年温めていた企画だったようである。世界中の誰もが知る、かの名作を映像化するのであるから(しかも大胆に翻案しながら)、氏の意気込みも相当なことだったろう。実際、見てみると、吉田喜重らしい独特の映像美学が各所で追及されている。氏のアーティスティックな感性がほとばしった映像作品になっている。

 例えば、大掛かりなセットを幽玄的に捉えた独特の世界観は素晴らしい。また、呪術的な儀式のシーンも大変面妖で面白かった。更には、鬼丸のネクロフィリア的な性愛も、禁忌に挑むような大胆さで、さながらホラー映画のような魅力が感じられた。

 加えて、演者陣の熱演も見逃せない。鬼丸を演じた松田優作の鬼気迫る怪演は今作の大きな見所である。
 そもそもこの鬼丸というキャラクターは、かなりドラマチックな人生を背負っている。元々は孤児だった彼は山部一族に拾われてやってきた。やがて、そこで出会った絹と禁断の愛欲に溺れていく。その愛し方が凄まじい。情熱的と言うか、暴力的と言うか‥。まるで肉体を貪り食うかのように彼女の身体を愛撫するのだ。彼のこの性愛は後半から徐々に狂気を帯びていくようになる。彼は絹の墓を掘り起こして、その遺体を夜な夜な愛するようになるのだ。流石に直接の描写はないが、この異常な性愛には戦慄を覚えてしまった。それを松田優作が異様な雰囲気を身にまといながら怪演している

 物語は鬼丸の数奇な運命をひたすら厳粛に描いているが、こうした見世物小屋的なハッタリが所々に出てくるのでどちらかと言うと寓話的な印象が強い。あの名著をこういう風に描く方法もあるのか‥という驚きが感じられた。また、山部一族の呪われた血筋はかなり根深く、それがこのメロドラマを超然としたものに見せている。いかにも吉田喜重らしいと思った。

 ただ、氏の今作にかける思いは十分伝わってくるのだが、いかんせん映画のテンポはかなり悪い。
 アーティスティックな感性が存分に発揮されたラブシーンは、必要以上に長ったらしい。また、鬼丸や絹、更には後半から二人の間に割って入る充彦の妹・妙、絹の遺児で母と同じ名前を付けられたもう一人の絹。彼らの情念が、すべからく抽象的で物足りない。確かに松田優作の荒々しいセックス演技には目を見張るものがあるが、吉田喜重という監督は余りにもスタイリッシュな映像作家で、その熱演から泥臭い"性”を打ち消してしまっている。演技と演出の組み合わせの悪さを感じた。

 例えば、以前書いた「エロス+虐殺」(1970日)「煉獄エロイカ」(1970日)、あるいは他の作品にしてもそうだが、吉田喜重の映画は非常に幻想的でシュールな作品が多い。そういったストーリーの判然としない映画の中では、こうしたアーティスティックな感性は上手く溶け込む。しかし、今回の物語は、言ってしまえば情熱がほとばしるようなベタなメロドラマである。そこにこういう表現は今一つしっくりと来ない。もっと生々しくドロドロとした表現の方が、個々の情念がダイレクトに伝わってきて良かったのではないだろうか。
 もっとも、それを言ってしまったら、喜重らしい作品ではなくなってしまうだろうが‥。
[ 2013/10/14 00:45 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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