カンヌに縁のある34人の監督たちが一堂に集結したオムニバス作品。
「それぞれのシネマ~カンヌ国際映画祭60回記念製作映画~」(2007仏)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ・ジャンルファンタジー・ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ) カンヌ国際映画祭の60回目を記念して作られたオムニバス作品。世界的に著名な作家34人が3分間の短編を思い思いに撮り上げている。
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(レビュー) オムニバス作品も色々とあるが、たった3分という短い時間の中に自分の作風を落とし込むのは中々難しいものである。中には失敗しているように感じる作品もあるが、とりあえず夫々の<シネマ>に対する思いは伝わってきた。さすがは名だたる名匠たちが集うだけあって、いわゆる企画物とはいえ一味違った輝きを伴った競作になっている。
中でも、映画館のマナーを皮肉ったコンチャロフスキー編、トリアー編が中々楽しめた。前者はクスリと笑える味のある作風で、後者は凄惨な結末にドン引きするほどの怖い作品だった。いかにもトリアーらしい。
他には、今後の3D映画を占うかのような、眩惑的でビビッドな映像世界を炸裂させたD・リンチの作品も刺激に満ちていて面白く見れた。
同様に、クローネンバーグの作品も映画の終末を予言するかのようなSFチックなブラック・コメディになっている。3分という限られた時間を逆手に取った1カメ1カットのアイディアが上手い。
ヴェンダースの作品は、時代に逆行するかのような文明と非文明の相克の中に、自らカメラを持ち込むことで映画の有りようを改めて問い直している。他の作家がアイディアを優先させた中に、こうした朴訥としたドキュメンタリーを選んだ辺りは頭一つ抜きんでていると感じた。
ノスタルジーという事で言えば、シャオシェン、イーモウといった中華圏の監督たちの作品も印象に残った。 自身の映画体験が多分に感じられる。
他に印象に残ったのでは、久々にJ・カーンピオンが監督したブラックなファンタジー作、息詰まるような演出が相変わらず好調なダルデンヌ、スレイマンの不条理コメディ等が安定している。
また、M・チミノが今作で約10年ぶりにメガホンを取っている。別に引退しているわけではないのだが、現役時代を思わせるようなキレのある作風が魅力的だった。
逆に今一つだったのはカウリスマキ、カーウァイの作品である。夫々の個性がよく出ていて一発で彼らの作品と分からせてしまうあたりは流石だったが、他に比べると今一つだったか‥。
尚、日本からは北野武が参加している。自身の作品「キッズ・リターン」(1996日)を引き合いに出してクスリとさせるような一発ネタになっている。3分という縛りを考えた場合、その狙いは上手くいっているように感じた。