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サン・ジャックへの道

ユーモアとペーソスを交えて描いたロードムービー。
サン・ジャックへの道 [DVD]サン・ジャックへの道 [DVD]
(2007/09/26)
ミュリエル・ロバン、アルチュス・ド・パンゲルン 他

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「サン・ジャックへの道」(2005仏)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 会社社長ピエール、女性教師クララ、妻から見捨てられた無職の男クロード。険悪な3人の兄弟は母親の遺産を相続することになった。しかし、それには条件が付いていた。その条件とは、スペインにあるキリスト教の聖地サン・ジャックへ、3人一緒で旅をするというものだった。彼らは仕方なく巡礼のツアーに参加することになった。そのツアーには他にも様々なワケあり面々がいて‥。
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(レビュー)
 仲違いしている3人の兄弟が母親の遺言に沿って一緒に旅をするうちに、人生に大切なものは何なのかを知っていくハートウォーミングなロード・ムービー。

 決して大きな感動を得られる作品ではないが、人生の意味を見つめなおしていく兄弟の葛藤には素直に入り込むことができた。そして、映画を見終わって彼らのことが愛おしく思えてしまった。それだけ人物が活き活きと造形されていたということだろう。普遍的なテーマを発した所にも好感を持てる。

 道中はピエール、クララ、クロードという3人の兄弟の対立を軸にしながら、周縁の人々との交流が丁寧に描かれている。彼らが目指すキリスト教の聖地サン・ジャックは、信者にとってはとても意義深いもので、それを目指す行路は約1500㎞にも及ぶという。これは相当に辛く長い旅である。しかし、実際に欧州ではここを目指す巡礼者は毎年数万人にも上るということだ。本当にこうした旅行ツアーはあるのだろう。

 ピエールたちは母親の遺言のせいで、仕方なくこのツアーに参加することになる。しかし、最初から信仰心など持っていない彼らにはこの旅は苦痛でしかない。しかも、仲の悪い兄弟と常に一緒に行動するのだから溜まったものではない。

 3人の中では、特にピエールとクララの対立は相当に深刻である。何か言葉を発しただけで喧嘩が始まるありさまで、もはや水と油の関係である。この二人は決して交わることがない。一方、クロードはどちらかというと傍観者的な立場に立ってそれを眺めているだけである。彼はアル中でバツイチ、おまけに無職で無一文という甲斐性無である。何をやっても不器用で、それがまた他の二人をイラつかせてしまう。

 ツアーには他にも様々な面々が参加している。アラブ人少年二人組とその同級生の女の子二人組、病を患った中年女性、ツアーのガイド等。彼らも主要3人に負けず劣らず、中々個性的に造形されている。

 中でも、ドラマのキーとなるのは、失読症を克服するためにこの旅に参加することになったアラブ人少年ラムジーと、病気を抱える孤独な中年女性マチルドである。前者はクララとの間に師弟関係を築き、後者はクロードとの間に恋愛関係を築いていく。兄弟は彼らとの交流によって、ささくれだった心に余裕ができ、相手を思いやる気持ちを芽生えさせていくようになるのだ。このあたりのエピソードは、ロードムービーとしては実に常套なドラマであるが、最後には中々清々しい鑑賞感を残してくれる。

 また、ラムジーに関しては終盤で大きな事件が発生し、これが旅のラストに少しばかりのセンチメンタリズムを与えている。今作における彼のエピソードは、実はかなり重要な位置を占めている。主たるドラマは3兄弟の関係修復のドラマになるが、その袖で描かれるこのエピソードも中々味わい深いものがあった。

 監督・脚本はコリーヌ・セロー。もはやフランス映画界になくてはならぬコメディ映画の職人といった作家だが、今回も最後まで安定した手腕を見せてくれている。彼の演出は基本的に笑いを主としたテイストでまとめられているが、所々にペーソスを織り込むあたりに一定の深みが感じられた。
 ただ、これは監督の元々のリズム感なのだろう。少し落ち着きのない編集箇所があった。前作「女はみんな生きている」(2001仏)でもこうしためまぐるしい編集が見られたので、おそらく意識しての編集だと思う。そこだけは全体から浮いてしまい、若干奇異に映ってしまった。

 尚、本作で一番しみじみときたのは、ピエールが"ある選択”をするシーンだった。ここで初めて3兄弟が遺書の本当の秘密を知ることになるのだが、これにはしみじみとさせられた。思うに、この選択をクララとクロードにさせてしまったら通り一辺倒な作品になっていただろう。敢えてそこをピエールにさせた‥という所にこの映画の良さがある。
 また、笑いで一番印象に残ったのは、いびきのネタ、いけ好かないビジネスマンのキャラが可笑しかった。

 本作は自然風景も美しく撮られていて観光映画的な趣もある。ある意味で、この旅は心の清浄を促す旅のようにも思う。それを表すかのような美しい光景の数々には心洗われた。
 そして、もう一つ。今作には度々、夢のシーンが挿入される。こちらもかなりシュールな映像で面白く見れた。
[ 2013/11/20 00:57 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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