前作以上の過激さで描いた衝撃の問題作第2弾!
「ムカデ人間2」(2011オランダ英)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 地下駐車場で警備員の仕事をしているマーティンは、映画「ムカデ人間」のファンだった。勤務中にDVDを繰り返し見ながら、自宅では実際にムカデを飼っている。家では母親と2人で空虚な暮らしを送っていた。やがて彼は抑圧された日々から解放されるように、映画の中の主人公と同じように次々と一般市民を襲っていくようになる。
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(レビュー) センセーショナルな内容で物議を呼んだ
「ムカデ人間」(2009オランダ英)の続編。
製作・監督・脚本は前作と同じトム・シックスである。スタッフが同じなので見世物映画的なテイストは今回も一緒である。ただ、今回は前作以上にハードコアな内容になっている。面白半分で前作を見た人でも今回はかなりきつい内容になっているので、これから見ようという人は覚悟して見た方がいだろう。
さて、前作で主役だったハイター博士が死んでしまったので、一体どうやって続きを作るのだろうか?そんな心配をしたのだが、なるほどそういう手できましたか‥という感じになっている。要するに、前作は映画の中の出来事でした‥というオチにして、今回はまったく新しいストーリーで作られている。
今回の主役は知的障害の中年男マーティンである。彼は映画「ムカデ人間」をこよなく愛する変質者で、映画と同じことを自分でも実行しようとする。映画に影響されて‥という所に多少の短絡さを覚えるが、そこはそれ。彼は常日頃から母親に抑圧されており、そのストレスが今回の凶行の原因になった‥とも取れるになっている。そういう意味では、主人公の狂気の原動は前作のハイター博士以上に深刻なものとなっている。また、あちらは映画の中のフィクションだったのに対して、こちらは本物のキチガイだったという所に恐ろしさも感じられた。
しかし、前作同様、今回も事件の社会的影響がほとんど描かれていない。あれだけマーティンが一般市民を拉致監禁しておきながら警察や周囲は誰も騒がないとは一体どういうことか‥?そこはリアリティを考えた場合、物足りない部分だった。
グロテスクな描写に関しては、前作以上に過激になっている。
マーティンは医者でもなければ科学者でもない。倫理的な問題はあるにせよ、前作のハイター博士には一応、理路整然とした思考があった。しかし、今回のマーティンにはそれすらもないのである。現実と映画の世界をごっちゃにした只の狂人である。
そんな彼が映画の中のハイター博士を真似て手術をしようとするのだから、当然かなり無茶苦茶になっていく。その一連の描写はかなりエグく撮られていて、かなりキツイものがあった。特に、膝の健を切断するシーンと、鋲打器を打ち込むシーンは見ていられなかった。また、前作では敢えて封印したであろうスカトロ描写も今回は画面に大写しとなる。グロテスクさを和らげようとしたのか、今回は全編モノクロ映像となっているが、それでもやはり見る人を選ぶ作品となっている。
ただ、一方で今回もクスリとさせるようなコメディ演出があり、そこについては楽しませてもらった。精神発達障害者であるマーティンは言葉を一切喋らず、感情の全てを行動でストレートに発する。それが時々子供のようなしぐさに見えるのだ。例えば、母に叱られて駄々をこねたり、排せつ物を見てはしゃいだりetc.容姿もまん丸の肥満体でどこか赤子を思わせる。この無垢なる存在には、前作のハイター博士とは一味違ったチャーミングさが感じられた。
そして、マーティンのこの幼児性が強調されれば強調されるほど、今回のドラマにはうっすらと母性の喪失というテーマが透けて見えてくる。これはマーティンと母親の関係にも見ることができるのだが、それ以上に今回拉致された被害者の一人、妊婦のキャラクターにこそ見ることが出来る。
彼女は終盤で”ある行動”に出る。これが筆舌に尽くしがたいほど凄惨で、尚且つ母性というものに対する冒涜として強烈に印象に残った。見ている最中ずっと、何かしら含みを持たせたキャラだな‥とは思っていたが、まさかこういう行動が待っていたとは‥。正直、今作で一番気分の悪くなるシーンだった。
この監督は前作から非人道的な見世物映像を通して、徹底して人間の非人間性を描いてきた。今回はそれを更に過激にヴァージョンアップしたという感じである。ここまでの物を見せつけられてしまうと圧倒されるほかない。
映画のラストは、やや曖昧な終わり方になっている。妄想か?現実か?どちらとも取れるようになっているので、そこは賛否分かれるかもしれない。あるいは、今作は全3部作の予定らしいので、次作を見れば今回のラストの意味が判明するのかもしれない。
いずれにせよここまで過激に突っ走ってきた今シリーズが、どういうクライマックスを迎えるのか?怖いもの見たさというのもあるが、俄然次作に興味が湧いてきた。