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最高の人生の見つけ方

M・フリーマン、J・ニコルソン。名優二人が魅せる人生の終末ドラマ。
最高の人生の見つけ方 [DVD]最高の人生の見つけ方 [DVD]
(2010/04/21)
ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン 他

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「最高の人生の見つけ方」(2007米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 自動車整備工のカーターが病に倒れて入院する。大富豪の実業家エドワードと同室になり、暫く一緒に過ごすことになった。その後、夫々に余命6か月と宣告された。二人は残された人生をどう生きようかと思案する。そして、死ぬまでに叶えたいリストを書いて一緒に旅に出た。
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(レビュー)
 貧しいながらも大家族に恵まれたカーター。名声を手にしながらも孤独な人生を送るエドワード。対照的な二人の中年男が人生にやり残したことを実現していくために一緒に旅をする人間ドラマ。

 いわゆる難病物だが、ここで語られているポジティヴなメッセージには多くの人々が勇気づけられるのではないだろうか。語り口が明快で大変親しみやすい作品になっている。

 尚、死を宣告された直後に”やりたいことリスト”を作成するというのは、以前見たS・ポーリー主演の「死ぬまでにしたい10のこと」(2003カナダスペイン)に非常によく似ていると思った。日本人にはこういう感覚は余りないと思うが、向こうでは結構あるのだろうか?わざわざリストにして書き出すことで、余生をどう生きていくかということを自覚したいのかもしれない。日本人は思っていることを余り口に出さない民族であるのに対して、外国人は自己を主張することが重要とされている。その差なのかもしれない。

 なんと言っても、今作はテーマが胸に染みる。人は死に際して現実をどう受け止めていくのか?言ってしまえば、死の覚悟みたいなものを今作は示している。

 その時になってみないと中々考えないことだが、しかし死というのは、いつどこでやって来るものか分からない。いざという時にはどう受け止めればいいのか?絶望に苛まれて塞ぎ込んでしまうのか?あるいは自暴自棄になってしまうのか?人それぞれだろう。

 今作のエドワードとカーターは、大切な人と一緒に過ごすこと、若い頃に出来なかった物に挑戦すること等、色々とリストに書いて実践していく。2人はただ病院のベッドで静かに死を待つよりも、残された少ない時間を自分自身のために使おうと活発に行動していく。つまり、ネガティブに考えるのではなくポジティブに死を捉えていくのだ。その姿は実に輝いて見える。

 そして、そこで育まれていく友情も良い。孤独なエドワードはカーターと一緒に旅をすることで、自分の知らない価値観を知っていく。そして、彼自身が抱える過去の"ある問題”を修復していく。一方のカーターも、エドワードのおかげで世界中を見聞し、何物にも変えがたい充実した経験をしていく。そして、家族愛の素晴らしさについて教えてもらう。彼らは敢えて延命処置をせずに、孤独や過去の遺恨を払拭していくのだ。遅きに失したと言うことも出来るが、この姿勢は実に天晴で見る者の胸を打つ。

 考えてみれば、彼らのこのポジティブな生き方は、普通に生活を送っている我々にも見習うべき点が多いように思う。人生とはタイムリミットのある道程である。ただ何となく過ごすのではなく、人生をより良いものにしようと精進していくことは、生きる上で常に大切なことだと思う。それこそエドワードとカーターのように、死に際して慌ててリストを作るようなことがないように、我々は日々悔いを残さないとうに懸命生きることが大切ではないだろうか。

 一方で、今作を見て 末期患者にそんなこと出来るわけないじゃないか‥と思う人もいるかもしれない。病院を抜け出して世界中を旅するなんて荒唐無稽だ。現実はそんなに甘いもんじゃない。多くの人は大して事件もなく安らかに死を待つものだ‥と。確かにその通りである。単に理想を掲げただけでは、それは夢物語に過ぎない。しかし、今作はそのあたりの不満も、きっちりとシビアな現実を描くことで応えている。

 今作は後半に入ってくるあたりから徐々にシリアス色が強められていく。二人の会話の中に神、天国といったフレーズが出てきて、死がすぐそこまで来ている現実を突きつける。2人の旅は一時の夢でしかなく、現実に戻れば相変わらずの闘病生活、家族とのギクシャクした関係、会社の重責といった問題が待ち受けているのだ。この映画は、後半からそうした現実問題を照射していくことで、単に夢見て終わり‥というだけのドラマになっていない所が良い。そこに一定の歯ごたえが感じられる。

 監督はロブ・ライナー。洒脱なコメディからシリアスなサスペンスまで器用にこなす職人監督で、個人的には「恋人たちの予感」(1989米)、「ミザリー」(1990米)が好きである。最近では「迷い婚-すべての迷える女性たちへ-」(2005米)という作品を紹介した。今回も彼の持ち味である軽妙な演出が前面に出た作りになっていて、最後まで肩の力を抜いて見ることが出来た。特に、世界各地を旅する一連の描写は、明るく開放感に満ちていて楽しめた。

 また、深刻になりかける後半も、カーターとエドワードのユーモラスなやり取りを前面に出すことで大変見やすく作られている。例えば、トランプやスカイダイビング、レース場のシーンで見せる二人のやり取りは微笑ましく見れた。こうしたトーンの抑揚のつけ方は、さすがに第一線で活躍し続ける職人監督ならでは‥という感じがした。終始、安心して見ることが出来た。

 ただ、シナリオには少しだけ文句をつけたい。カーターが妻を捨ててエドワードと旅に出る動機。ここが少し独りよがりなものに思えてしまった。カーターと妻の冷え切った関係をプレマイズしておく必要があっただろう。
 逆に、シナリオの上手さで光っていたのは伏線の張り方である。旅のリスト、エドワード愛用のコーヒーメーカーといった小物は、伏線としてドラマの要所で上手く機能していた。また、登山のクダリも伏線の巧みさでしみじみとさせられた。

 キャスト陣は、カーター役のM・フリーマン、エドワード役のJ・ニコルソン、共に好演している。ストーリー自体よく出来ているというのもあるが、それを活かしきった彼らの演技も忘れがたい。今作はある種バディムービーのような楽しさがある。その魅力を引き出した二人の名優のパフォーマンスには素直に拍手を送りたい。
[ 2013/12/12 23:10 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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