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かぐや姫の物語

高畑勲渾身のアートアニメ。
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「かぐや姫の物語」(2013日)star4.gif
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー
(あらすじ)
 竹林にやってきた翁は、光る竹から不思議な赤ん坊を拾う。翁は天からの授かりものとして婆やと一緒に大切に育てた。やがて赤ん坊は、近所の子供たちと一緒に野山を駆け巡りながら、明るく元気な少女に成長した。その後、翁は同じ竹林から金と着物を見つけた。翁は少女にかぐや姫と名付けて、その財産で都に屋敷を構えることにする。

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(レビュー)
 有名な「竹取物語」をスタジオ・ジブリの高畑勲が、8年という歳月をかけて作り上げたファンタジー・アニメ。

 昔から馴染のある物語だが、改めてこうして見ると、このドラマは人間の欲心を痛烈に皮肉った風刺劇だったことがよく分かる。ストーリーはシンプルだが、そこに隠されたテーマは中々鋭いと思った。

 今回の物語で一番驚かされたのは、かぐや姫に悪女的なキャラクターが混じっていたことである。彼女はその神秘的な魅力で周囲を虜にし、関わった者を皆不幸に陥れていく。例えば、彼女にプロポーズしに来た5人の皇子などはそのいい例だろう。そこにかぐや姫の「罪と罰」のドラマが見えてくる。

 では、具体的に彼女の「罪と罰」とは何だったのか‥ということになるのだが、これがかなり深い。それを考える場合、彼女が地球にやって来た理由を探っていかなければならないと思う。かぐや姫が地球に来た理由は、最後のシーン、余りにも有名なかぐや姫と翁たちの別れのシーンで判明する。月からの使者の口から、実はかぐや姫自身が月で罪を犯し、その罰として汚れたこの地球に送り込まれた‥ということが語られる。

 では、彼女は月でどんな罪を犯したのか?残念ながら、そこははっきりとしない。しかし、何となく想像はできる。彼女は月から美しい地球を眺めてずっと憧れていた。いつか地球に行きたい‥。そう思ったのだ。おそらくこれが彼女の罪だったのだろう。

 しかし、彼女は憧れの地球で残酷な現実に打ちのめされてしまう。彼女の美しさに身を亡ぼしてしまう皇子たち。名声に目がくらんでしまった翁。自分の存在によって全てのものが狂ってしまう現実に、彼女の地球に対する憧れは無残にも散ってしまうのだ。更に、愛する人と引き裂かれて窮屈な暮らしを強いられるようになったことで、彼女は地球での暮らしに嫌気がさしてしまう。その結果、彼女は地球を去る決意をする。自分がいなければ、皆が普通に暮らしていけるのだ‥と考えるのだ。

 確かに地球人からすればかぐや姫は厄介な悪女ということになろう。しかし、悪女というものは自発的に他者を虜にするものである。彼女にはその自覚がない。ただ純粋に地球とそこに住む人々を愛しただけだった。全ては彼女の罪作りな美が招いた結果だった。彼女は悪女と言うより、やはり姫の名にふさわしい高貴な存在だったように思う。

 こうやって考えてみると、かぐや姫が抱え込んでしまった地球での罪の意識とは、実はかぐや姫自身に原因があるわけではなく、彼女をそこまで追い込んでしまった周囲の人々に原因があるように思えてくる。愚かで強欲な地球人が純粋な彼女に罪の意識を背負わせてしまった‥というように。

 そして、かぐや姫のこの苦しみは必然だったように思う。つまり、その罪の意識は月の人々がかぐや姫に与えた罰だったのではないか‥ということだ。
 かぐや姫の罪とは”地球に憧れたこと”で、その罰とは”地球での暮らし”だったのではないだろうか。

 結局、高畑勲がこの物語で何を伝えたかったのかというと、それは人類の業だったのだと思う。
 ラストで高畑監督は月からの使者を天女とその一行として描いた。伝承されてる昔話もそうなっているが、これは明らかに天界と現世の対比を成している。愚かなる人間の業の深さ、言い換えれば人間というものに対するペシミズムを、ここまで突き放した形で俯瞰で捉えた所に凄味を感じてしまう。

 ラストでかぐや姫は月へ帰って行く。その目に地球はどう映ったのだろうか?あの憧れていた地球とは全く違って見えたに違ない。そして、かぐや姫の心の中には地球に対する未練がまだあった‥ということも確かであろう。それを思うと切なくさせられる。

 映像はまるで水彩画のような淡いタッチが貫かれている。これは高畑監督の前作「ホーホケキョ となりの山田くん」(1999日)から続く氏のこだわりであろう。描線と色使いの柔らかさに温かみが感じられた。アニメーションでこれを表現するのはかなりの労力と時間がかかったことと思う。そういう意味では、製作期間8年という長さも頷ける。

 声優陣は概ね安心して聞けた。ジブリは声優経験の少ない俳優やアマチュアを起用することが多いが、今回は皆好演していると思った。特に、翁役を演じた地井武男が抜群に良かった。
[ 2013/12/20 02:07 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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