実話の映画化。T・ハンクスが絶妙なさじ加減でアメリカそのものを体現している。
「キャプテン・フィリップス」(2013米)
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション・ジャンル社会派
(あらすじ) 2009年、ケニアへの援助物資を運ぶコンテナ船が、ソマリア沖で海賊に襲撃される。一度は撃退したものの、翌日再び襲撃を受け、武装した4人の海賊に船を乗っ取られてしまう。艦長のフィリップスは乗組員を機関室に避難させて金庫の金を差し出した。しかし、海賊たちはそれでは足らず多額の身代金を要求した。こうして、フィリップスと海賊の戦いが始まる。
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(レビュー) 実際にソマリア沖で起こった事件を、社会派作家P・グリーングラスがT・ハンクスを主演に迎えて描いた海洋サスペンス作品。
事件そのものはニュースで聞いたことがあるが、ここまでの詳しいことは知らなかった。今作を見ると、舞台裏ではこういうことが行われていたのか‥ということが分かり興味深い。尚、原作は今作の主人公リチャード・フィリップス本人の共著となっている。海賊との生々しいやり取りは、当人にしか分からないリアルさがある。これは本作の大きな強みだろう。
今回のこのドラマには、超大国アメリカの傲慢さとそれに虐げられてきたソマリアの根深い対立の関係が読み取れる。
ソマリアは実に数奇な運命をたどってきた国である。1980年代後半に激化した内戦によって国は泥沼の戦場と化した。R・スコット監督が撮った「ブラックホーク・ダウン」(2001米)はソマリアに派遣された米軍を中心とした多国籍軍の活躍を描いた戦争映画である。この時の地獄絵図と化した戦場の様子は衝撃的であった。アメリカはその後もアルカイーダの構成員が潜むとしてソマリアに軍事介入したことがあり、連綿と続く因縁が両国の間には存在する。ソマリアの海賊は無差別に相手を襲うが、相手がアメリカ人だと聞くと俄然凶暴になる。それは単にその場だけの空気ではなく、やはりアメリカという国に対する特別な感情があるからであろう。
物語は実にシンプルである。余計なものが一切ないサスペンス重視の構成になっている。確かにドラマ的には喰い足りないが、逆にここまでドラマを削ぎ落としたことによって、P・グリーングラス監督のサスペンス・タッチはより主張されることとなった。フィリップスと海賊たちのやり取りがドキュメンタリータッチで捉えられていて、終始目が離せなかった。彼のアメリカでの出世作「ユナイテッド93」(2006米)を想起させるほどの生々しさが感じられた。
また、ハリウッド映画の場合は、実録物の場合であってもアメリカ側に拠った視点で物語を紡ぐ傾向にあるが、本作はその辺も公平である。海賊側に立ったドラマも所々に挿話され、それが一定の深みを生んでいる。言わば、戦争には勝者も敗者もないということを辛辣に語っている。
例えば、今回襲撃に参加した海賊は、皆銃もまともに扱えない年端もいかぬ少年ばかりである。彼らは青春を犠牲にして戦いに身を投じなければならなかった。その姿に憐憫の情が湧いてしまう。
また、リーダーのムセは、大金持ちになってアメリカへ渡るのが夢だとフィリップスに語る。おそらくそれは皮肉でも何でもなく本音なのだと思う。普段は銃を持って凶暴に振舞っていても、素は純真な少年なのである。このあたりには、今もってなくならない先進国と発展途上国の格差を見てしまう。
キャスト陣も夫々に好演している思った。フィリップス役のT・ハンクス、海賊を演じた少年たち。皆、熱度の高い演技合戦を見せている。
特に、T・ハンクスはヒロイックとアンチヒロイックの中間を絶妙なさじ加減で体現している。そこには超大国アメリカへの皮肉が込められていることは間違いないだろう。嫌みなくサラリと主張するあたりに上手さを感じた。
お久しぶりですありのひろしさんへ、今年の東京国際映画祭はバラエティ豊かでした。この、キャプテン・フィリップスを初めとし、さらにはドキドキ!プリキュアの映画や榊英雄さんの監督の映画捨てがたき人々も出品されていて、とてもいいものになりました。来年はどんな作品で楽しまくれるのでしょうか?楽しみです。
こんにちは。
東京国際映画祭は一度見てみたいですね。
この作品を含めバラエティに富んでますからね。昨年はコーマンが審査委員長を務めていたし。
来年は何とかチケットを取りたいものです。
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