fc2ブログ










女は二度生まれる

意味深なタイトルを噛みしめたい。
女は二度生まれる [DVD]女は二度生まれる [DVD]
(2014/01/24)
若尾文子、藤巻潤 他

商品詳細を見る

「女は二度生まれる」(1961日)星3
ジャンルロマンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 小えんは店で一番の売れっ子芸者である。その夜、新顔の客・筒井から名刺を貰って上機嫌になった。後日、馴染客の付き合いで訪れた寿司屋で彼女は板前の野崎と出会う。彼のことを何となく気に入った小えんは、その後も度々彼の店を訪れた。その一方で、彼女は近所ですれ違う大学生・牧のことも気になった。また、ある日、映画館でナンパしてきた高校生とも親密になった。公私ともに順風満帆な生活を送る小えん。しかし、そんな日々は突然の終わりを告げる。彼女が働く置屋が営業停止を食らってしまったのだ。仕事を失った小えんは、仕方なくバーのホステスなどを転々としながら生計を立てるようになる。そこで彼女は筒井と再会する。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 「女は二度生まれる」というタイトルが実に良い。逞しくしたたかに生きてきた小えんが、ラストで新しい生き方を見つけるのだが、ここにタイトルの意味が込められているように思う。女は若さと美さえあれば、それを武器にして世の中を如何様にも渡り歩くことができるが、時を経るごとに外面上の魅力は失われてしまい、それまでの”武器”が使えなくなってしまう。その時、女はどう生きていけばいいのか?そこに「二度生まれる」というタイトルの意味が投影されている。この映画は余り予算がかかっていないように見えるが、テーマ自体は女の一生を描いた大河ドラマ的なスケール感が感じられる。中々見応えのある作品だった。

 原作は富田常雄の「小えん日記」である。それを名匠・川島雄三が井出俊郎と共同で脚色し監督を務めた。今作は何と言っても、この二人が作り出す軽快なドラマ運びが見所である。

 例えば、小えんと客たちのやり取り一つとっても、軽妙な会話、洒落た所作が、本来淫靡になってもおかしくない関係をさっぱりと見せている。飄々と小えんを演じた若尾文子の好演もあるが、川島&井出コンビニよる上手さもあろう。

 具体的には、小えんが贔屓客を連れて野崎の店を訪れるシーン。一緒に同行した贔屓客や店主の手前、二人は互いの関係を隠しながら、近くの神社で行われる酉の市に行く日取りを算段する。「二の酉に行こうかしら」「それじゃああっしは三の酉に」「でも三の酉でもいいわねぇ~」といった具合に、とぼけた会話で日取りを決めていくのだ。なんとも洒落たやり取りで面白い。

 一方、川島の演出も所々で冴えを見せている。
 例えば、小えんとナンパ少年が初めてベッドインするシーン。緊張する少年に気を使って小えんが窓を閉めようとするのだが、立てつけが悪いので中々閉まらない。焦らされる少年の心理を暗に示すかのように、小道具を巧み使った演出は正に見事の一言である。結局、少年は溜まりかねて小えんに抱きついてしまう。

 映画は後半に入ってくると、それまでの軽妙さが後退し、人生の岐路に差し掛かった小えんの葛藤に迫るようになっていく。
 置屋が摘発の煽りを受けて閉鎖し、バーのホステスになった小えんが、かつての馴染客・筒井に再会することで彼女の人生は徐々に暗転していく。後半は前半で見られたような陽気さがなくなり、ハードなメロドラマになっている。そして、これはそれまで若さと美貌で人生を渡り歩いてきた彼女に、現実の厳しさを教えるドラマとなっている。
 
 そして迎えるラスト。ここは印象に残った。彼女は少年に高級腕時計を与えて別れる。そして、一人で駅のベンチに座って汽車を待つ。彼女はこの時どんな思いで少年と別れたのだろうか?そして、これからどこへ行こうというのだろうか?その答えは劇中では語られていない。しかし、先述の筒井との不幸なエピソード、高級腕時計といった小道具の扱いから、まったく新しい別の人生を歩もうとしていることはすぐに想像できる。
 観客に想像を喚起させるシナリオと演出は、実に見事と言うほかない。今作のテーマとタイトルの意味を自然と気付かせてくれる締めくくり方になっている。

 今作の難は、場面が流され気味で、過去の川島作品に比べると若干深みが足りない所だろうか‥。確かにスリムなシナリオと軽妙な演出のおかげで、全体的に非常に見やすい作品にはなっている。ただ、その反面、次々と現れては消えていく男たちにそれほどドラマが無いのは物足りなかった。筒井は後半のキーパーソンとしてしっかり描かれていたが、それ以外の男たち。例えば板前の野崎にしても、大学生の牧にしても、所々の変容振りに違和感を持った。彼らの心情まで突っ込んで描いていないせいである。彼らの小えんに対する思いをもう少し丁寧に描いてくれれば、このあたりの不自然さは解消されたであろう。
[ 2014/02/04 01:07 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1229-70c3ab41