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オンリー・ゴッド

シュールなドラマは賛否が分かれそう。
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「オンリー・ゴッド」(2013仏デンマーク)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 タイのバンコク。ムエタイのジムを経営するジュリアンは、裏では兄と麻薬密輸業をしていた。ある日、兄が少女を強姦して殺害する。警官隊と謎の男チャンがやって来て兄は捕まった。そこに被害者の父親が呼び出される。そして、チャンに促されるようにして父親は兄を殺した。兄の死亡を聞きつけた母・ジュナがアメリカからやってきた。彼女はジュリアンに兄の復讐を命じるが、彼は実行することが出来なかった。そこで彼女は地元マフィアを使ってチャンを暗殺しようと考える。

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(レビュー)
 復讐に復讐を重ねる人間の業をダーク且つシュールに綴った寓話。

 監督・脚本はニコラス・ウィンディング・レフン、主演はライアン・ゴズリング。この二人は前作「ドライヴ」(2011米)でコンビを組み、映画ファンの間でかなりの評判になった。スタイリッシュな映像、過激なバイオレンス、そしてゴズリングのニヒルな佇まいが大変魅力的な作品だった。おそらく前作を見た人の多くは今回の新作を大いに期待したに違いない。しかし、内容的に色々な意味でぶっ飛んでいて、果たしてどれだけの人が納得できるか‥。スタイリッシュな映像やニヒルなムードなどは前作に共通するが、設定が判然としなかったり、見た人に解釈を委ねるような所がある。とにかく、実にユニークな作品となっている。

 ただ、確かに色々と解釈に困る部分もあるのだが、見終わった後には何となく一つのテーマは読み解けた。映画の邦題は「オンリー・ゴッド」。原題は「ONLY GOD FORGIVES」である。翻訳すると”神のみが赦す”といった意味になる。つまり、ここで言う神とは誰なのか?そこが分かればこの難解なドラマからもテーマは導き出せる。要するに、これは罪業を重ねる人間に神の裁きが下る‥というドラマである。
 被害者の父親が仇に復讐を果たし、復讐された側は再び報復をするという堂々巡り。その中でどんどん人間性を失っていく主人公たち。最後にジュリアンはそれを止めるために”ある行動”に出る。つまり、本作における「GOD」とは主人公のジュリアンのことを指しているものと思われる。

 ただ、こうした解釈は出来ても、やはり見終わった後に今一つ呑み込めない感情も湧いてくる。そもそも神である所のジュリアンの存在が実にユニークなため素直にラストの”行動”に感情移入できないのだ。普通は神を描こうとしたら、こうしたキャラクターにはしないだろう。どうしてこのように造形したのか?そこに引っ掛かりを覚えた。

 もっと言えば、そもそもカラオケ好きな神様っている?ということである。これはレフン監督のユーモアなのだろう。確かに斬新ではある。しかし、何ともぶっ飛んでいてついていけないというのが正直な感想だった。これでは何だか新興宗教の教祖みたいではないか‥。はっきり言って苦笑ものである。

 一方、こうした判然としないストーリーはともかくとして、映像からはレフン監督の独特の美学がビシビシと伝わってきた。

 今回、特に目立つのは端正な画面設計である。キューブリック、あるいはD・リンチのような様式美が追及されており、色彩もダークな色調が極められている。とりわけ血の色を連想させる”赤”は今作のイメージカラーと言わんばかりに象徴的に登場してくる。全編に渡ってコントロールされ尽くされた映像は、見ているだけでため息が出てしまうほどの完成度だった。

 また、ゴズリング演じるジュリアンを含め、チャンや娼婦など、一部のキャラクターは完全に無表情を貫いている。そこが無機的且つ冷淡なC・ドライヤーのタッチを連想させた。これによって、作品の世界観が一種異様なムードに染められ、まるでこの殺伐とした世界の中で彼らは感情を殺すよりほかなかったのか‥と悲しい気持ちにもさせる。

 一方で、暴力場面は前作を超える凄惨さ、過激さで、こちらも中々見応えがあった。ただ、衝撃度という点では前作ほどのインパクトは感じなかった。というのも、今回は全編に渡ってバイオレンスのオンパレードなので、やっていることは過激な割にショッキングに写らない。抑揚がないのである。もっとも、ラスト直前のジュリアンの行動には驚かされたが‥。「スクールデイズ」というアニメがあったが、あれを連想した。

 主演を張ったR・ゴズリングは今回も基本的には「ドライヴ」の主人公に通じるような役作りをしている。しかし、ここまで能面を貫かれるともはや演技云々での評価はしずらい。どことなく暴力の匂いを漂わせた「ドライヴ」に比べると、随分と平坦な演技に感じたが、これもレフン監督の演出意図なのかもしれない。逆に敵役となるチャンのインパクトが凄まじく、今回は完全に食われてしまった印象もある。

 尚、神様が最後にカラオケで歌った曲がモトリー・クルーの「Home Sweet Home」のように思えたのだが気のせいだろうか?現地のタイ語なのでカバー曲かもしれない。この曲の歌詞が分かるとラストの意味も何となく計り知れる。「Home Sweet Home」はツアーに疲れたバンドが早く家に帰って休みたい‥という内容の歌詞である。
[ 2014/02/15 02:43 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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