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脱獄囚の実話の映画化。
穴 LE TROU Blu-ray穴 LE TROU Blu-ray
(2013/01/25)
ジャン・ケロディ、フィリップ・ルロワ 他

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「穴」(1960仏)star4.gif
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 青年ガスパールは殺人未遂の罪で刑務所に収監される。彼が入った部屋には4人の男たちがいた。3度の脱獄歴を持つロラン、目つきの鋭いマニュ、お調子者のボスラン、女好きなジョー。実は彼らは脱獄を計画していた。ガスパールはそれに加わることになるのだが‥。

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(レビュー)
 刑務所からの脱獄をリアリズム溢れるタッチで描いた実話サスペンス。

 非常にシンプルなドラマだが、監督・共同脚本のジャック・ベッケルの演出が奏功し、ガスパールを含めた5人の囚人の脱獄への執念には目が離せなかった。
 元々、ベッケルという監督はフィルムノワールを得意とする作家である。その資質は今回も存分に出ていて、陰影を凝らしたシャープなモノクロ・タッチが上手く緊張感を生んでいる。彼の熟練した演出が味わえるという意味では後期の傑作と言っていいだろう。尚、本作は彼の遺作となる。

 また、今回は小道具を使った演出も見事だった。例えば、”鏡”はラストのインパクトを見事に演出している。これには思わず見ている方としても「アッ!」と声が漏れてしまった。薬瓶を使った砂時計のアイディアも秀逸だった。刑務所という限られた空間で展開されるドラマだけに、こうした微細な演出が今回は冴え渡っていたように思う。

 一方、5人の男たちが織りなす人間ドラマはやや希薄で食い足りなかった。今作は脱獄計画をドキュメタリータッチで追いかけていく作りになっていて、彼らの内面にまでは深く言及されていない。対立、融和といったドラマもなく、唯一、ジョーだけが一匹狼的な存在で目立っていた。夫々の設定は個性的に色分けされているのだが、アンサンブル・ドラマにまでは発展しない。5人の素顔が分かるようなシーンがもう少しあっても良かったように思った。

 尚、今作で最も印象的だったのは、クライマックスのガスパールの葛藤と選択だった。これにはズシリとした重みが感じられた。今作のテーマは正にここに集約されていると言っても過言ではない。これが人間の卑しさか‥。見ていて、そう思わずにいられなかった。

 全編通して非常に緊密に作られた完成度の高い作品だ思う。ベッケルの最高傑作と評する人が多いのも頷ける。自分も確かにそう思う。しかし、一つだけ演出的に大きな不満があって、そこいついては残念だった。それは壁を壊す時の音である。あれだけ大きな音を立ててるのに周囲に気付かれないというのはどう考えてもリアリティに欠く演出である。映画的なサスペンス効果を狙っているという理論は、この場合当てはまらないように思う。そもそも5人は穴を掘る時に小さな声でヒソヒソ話をしているからだ。この音の演出の”ちぐはぐさ”は大いなる疑問である。

 今作は実話原作を元にした映画である。わざわざ冒頭で原作者自身が登場して、全ては事実を元にして作られています‥とまで語っている。また、実行犯の一人が実際にロラン役として映画にも出演しているということである。そこまでリアリズムにこだわった作品なのに、何故音の演出を疎かにしたのか‥。そこは勿体ないと思った。
[ 2014/02/24 01:03 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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