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続・激突!カージャック

S・スピルバーグ監督の劇場映画デビュー作。
続・激突!カージャック [DVD]続・激突!カージャック [DVD]
(2005/03/25)
ゴールディ・ホーン、ベン・ジョンソン 他

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「続・激突!/カージャック」(1974米)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ)
 前科歴のある主婦ルー・ジーンは、テキサス州の囚人更生施設にいる夫クロビスを訪ねる。赤ん坊が福祉局に取り上げられて里親に出されてしまったのだ。二人は赤ん坊を取り戻そうと施設を脱け出してパトカーをカージャックする。そして、赤ん坊がいるシュガーランドに向けて走り出す。
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(レビュー)
 S・スピルバーグ監督の初の劇場用作品。タイトルに「続・激突!」とついているが、今作はスピルバーグがTV用映画として作った「激突!」(1971米)とはまったく関係がない。これだと続編だと勘違いして見る人もいると思う。こういう邦題のつけ方はいかがなものだろうか‥。
 
 ちなみに、「激突!」はスピルバーグが映画界に入るきっかけとなったカーアクション映画で、彼のスリラー演出が冴えわたった初期の傑作である。今もって新鮮に見れる作品で、様々な映画でパロディにもされている。

 本作はそんなスピルバーグが満を持して臨んだ劇場用作品である。但し、全体の印象は「激突!」とは大分趣を異にする。「激突!」で披露したスリラー演出はほとんど見られず、どちらかというとユーモアを中心とした作りになっている。これは完全に脚本の狙いがそうなのだろう。ホラー的な作劇だった「激突!」に比べて、こちらは我が子を取り戻そうとする夫婦の絆を中心とした人間ドラマになっている。前半は笑えるシーンもあり、割と楽観的に見れるように作られている。
 ただ、中盤から逃走する夫婦が徐々に窮地に追い込まれることでシリアス色が強められていく。ラストはアメリカン・ニューシネマ張りのペーソスで幕引きされ、映画の始まり方からは想像もつかないような終わり方になっている。
 「激突!」ほどのインパクトはないが、こちらはドラマ的な面白さが追及されており、且つ様々なテイストが入った幕の内弁当的な面白さが感じられる作品になっている。

 それにしても、この夫婦のやることは全てが”でたらめ”で、見ていて歯がゆくさせられた。まだ若いカップルなのだが、まともに赤ん坊を育てられるようには思えない。彼らを追跡するベテラン刑事タナーが彼らを指して「まだガキだ」と言うが、本当にそのとおりである。
 例えば、警官を人質に取ってパトカーをカージャックするということからして、何とも行き当りばったりである。冒頭の施設の逃走劇にしてもそうだ。あそこでバレてしまったら、赤ん坊を取り戻す計画はそこで終わっていた。更に、見通しの良い大通りで呑気に飯を食うこと自体、全くもって危機感がない。実際、あの場面は警察に狙撃されてもおかしくなかった。

 このように、この夫婦は行動も思考も全てにおいて幼稚である。だからこそ、この逃走劇は中盤までユーモラスに見れるのだが、しかしこの映画は実話を元にしているということだ。事実は小説より奇なり‥というが、実に奇妙な事件である。

 同じ実話ベースの事件物としては、A・パチーノ主演、S・ルメット監督の「狼たちの午後」(1975米)を連想させられた。犯人が警察を翻弄しながらマスコミに祭り上げられていく様がよく似ている。「狼たちの午後」は、ある種社会の滑稽さを風刺したような所があるが、今作のカージャック事件にも同様のことが伺える。かなり脚色されている部分もあるのだろうが、夫婦が巻き起こす騒動に振り回される警察と世間の姿は傍から見ると実に滑稽である。おそらくスピルバーグもそこにアイロニーを込めたのだろう。

 先述したようにスピルバーグの演出は、中盤まではユーモラスに料理されている。例えば、冒頭の逃走劇におけるルー・ジーンの機転を利かせたキス、ノロノロ運転の老夫婦、事件に巻き込まれるアル中オヤジ、簡易トイレのクダリ、ガス欠のクダリ等、見ていて思わずクスリとさせられた。とりわけ『チキン』と書かれた レストランの看板は秀逸なネタだった。

 しかし、夫婦が旅の終点に近づくにつれて、スピルバーグの演出はシリアスなトーンに傾倒していく。
 例えば、ルー・ジーンは警察、市民、マスコミから追い回されることで徐々に精神が不安定になっていく。そして、やっとの思いで旅の目的地に辿り着いた時、彼女は現実を受け入れられなくて錯乱してしまう。母性の狂気化、暴走化をスピルバーグは悲痛に切り取っている。

 また、この逃走劇には夫婦以外にもう一人のメインキャスト、人質にされた新米警官も登場してくる。3人は一緒に旅をするうちに互いに情が芽生えていくのだが、このあたりの人間模様もペーソスを交えながら上手く作られていると思った。新米警官のバックストーリーがやや薄みという気がするが、三者の最後のやり取りには味わいがある。

 音楽はJ・ウィリアムズ。スピルバーグ監督とのコンビは今作から出発している。オーケストレーションのイメージが強いJ・ウィリアムズだが、ここでは舞台がテキサスということもありカントリー・ミュージック系で統一されている。今となっては意外な感じがした。

 撮影監督はV・ジグモンド。言わずと知れた、アメリカン・ニューシネマの潮流の中で活躍した名カメラマンである。ナチュラルな映像美が印象的で、特にラストショットは脳裏に焼き付いて離れない。夕焼けが反射する川辺に写るシルエットが、旅の終焉を哀しげに見せている。
 ちなみに、彼が撮影監督を担当した作品で「さすらいのカウボーイ」(1971米)という映画ががある。これはP・フォンダ監督・主演で作られた幻のアメリカン・ニューシネマとして一部でカルト的な人気を誇っている。確かに自分もこれは彼の光と影の巧みな映像センスが突出した傑作だと思う。今作のラストにはそれに匹敵するような美しさが感じられた。
[ 2014/02/26 01:36 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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