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狂った野獣

豪快なB級ムービー。渡瀬恒彦の狂演が印象的。
狂った野獣【DVD】狂った野獣【DVD】
(2011/02/21)
渡瀬恒彦、橘麻紀 他

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「狂った野獣」(1976日)star4.gif
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 目の病気でテスト・ドライバーをクビになった速水は、自暴自棄になり宝石店から金品を盗んで逃走した。恋人・美代子と一緒に逃げようと彼女の元へバスで急行する。ところが、そこに2人組の強盗犯が乗り込んできた。パニック状態に陥る車内で速水はひたすら身分を隠して警察からの追跡を逃れようとするのだが‥。

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(レビュー)
 強盗犯が別の強盗犯とかち合いバスジャック騒動を巻き起こしていくアクション・サスペンス作品。低予算のプログラム・ピクチャーながら中々の快作に仕上がっている。

 まず何と言っても、バスの中には様々な人間たちが乗っていて、これが今作の一つの面白さに繋がっていると思う。不倫中のカップル、オーディションに向かう途中の新人女優、通院中の叔母ちゃん、チンドン屋、登校中の小学生等。ストーリーの本文は速水が警察から逃走するサスペンス劇であるが、その傍らで繰り広げられる彼らの衝突、人間模様が面白い。

 例えば、チンドン屋が奏でる音楽は、修羅場と化した車内に一抹のペーソスを与えてガラリと雰囲気を変える。こうした所の味わい深さは他の単純なB級アクション映画には無い妙味だろう。

 キャストも中々頑張っている。元テスト・ドライバーの宝石強盗犯・速水を、渡瀬恒彦が粗野に演じていてる。彼は最初はバスの中で身分を隠して大人しくしているのだが、乗り込んできた銀行強盗犯に盗んだ宝石が見つかり素性がばれてしまう。そして、このまま言いなりになってたまるかと、彼らを殴り倒して自らがバスジャック犯となって追跡する警察と戦っていくのだ。彼の凄味を利かせた演技はかなりテンションが高く、タイトルの「狂った野獣」を見事に体現していると思った。

 また、銀行強盗犯の1人を演じた川谷拓三も良い味を出していた。ややファナティックなチンピラ演技は、いかにもこの人らしい。無抵抗の乗客に強がりを吐いても、速水の一括で萎縮してしまうあたりに、どこか憎めない愛嬌を感じる。

 他に、ラジオDJをする笑福亭鶴瓶、弾き語りをする三上寛のなどのゲスト出演も楽しめる。

 監督は中島貞夫。彼は中村錦之助主演の時代劇「関の彌太ッぺ」(1963日)で助監督を務めた後に独立し、今作のようなプログラムピクチャーを専門に量産した作家である。今回は約80分足らずという短い尺ながら、パワフル且つスピーディーな演出で濃密な内容となっている。手持ちカメラによるドキュメンタルな映像演出も作品にドライヴ感を与えていて◎。速水と美代子の様子をカットバックで紡ぐ演出も、作品にメリハリを付けていて良かった。

 アクションの見せ場も事欠かない。特に、白バイ警官がバスの後ろにへばりつくシーンは見応えがある。もちろん命綱を付けているのだろうが、体を張ったスタントに迫力を感じた。

 一方、今作で少し残念に思ったのは音楽である。かなり緩いBGMで緊張感が損なわれてしまう場面が幾つかあった。今作にはもっとハードな音楽の方が合っていたように思う。

 尚、先述の「関の彌太ッぺ」であるが、今作の中島貞夫監督以外に鈴木則文、牧口雄二といった後の監督たちも助監督を務めている。鈴木則文と言えば東映の看板シリーズ「トラック野郎」、牧口雄二と言えば衝撃のカルト作「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」(1976日)等のエログロ路線を突っ走った監督である。3人とも後の東映を引っ張った若き作家たちであり、彼らが助監督として一堂に会した「関の彌太ッぺ」は、改めて特別な意味を持った作品だということが再認識される。

[ 2014/03/25 18:10 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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