癖があるので間違いなく人を選ぶ作品だと思う。
シュールすぎてついていけない部分もあるが、個人的にはツボに入った。
「亀は意外と早く泳ぐ」(2005日)
ジャンルコメディ
(あらすじ) スズメは単身赴任の夫の代わりに亀の飼育をしているごく平凡な主婦。幼馴染のクジャクは、いつかパリでフランス人と結婚することを夢見ているスケールのでかい独身女性。ある日、スズメは偶然「スパイ募集」の広告を目にする。広告に書かれていたアパートへ向かうと怪しげな夫婦が出迎えた。早速、夫婦から500万円という大金を渡され指令が下される。しかし、その指令とは”普通に暮らす”というものだった。今まで同様”普通に暮らす”ことを心がけるスズメだったが、商店街の福引で当たった地引網漁体験にクジャクと出かけた際に思わぬ事件に巻き込まれる。
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(レビュー) 平凡な主婦がスパイ騒動に巻き込まれていくオフビートコメディ。
日常系の小ネタから、スパイ組織の巨大な陰謀まで、馬鹿馬鹿しいギャグが連発する。爆笑というわけではないが、こういったクスクス系の笑いは個人的にツボだったりする。あまりの強引さにげんなり‥なんて場面も幾つかあったが、むしろここまで馬鹿馬鹿しさに徹っしてくれればそれも潔いと思える。
登場人物達も皆ユニークだ。特に、加東先輩には爆笑した。他にも、豆腐屋、ラーメン屋といった、一癖も二癖もあるキャラ達が登場して場を賑わす。彼等は一見すると何のとりえもないごく平凡な連中なのだが、実は裏ではとんでもない秘密を隠し持っている。そのギャップが面白い。
しかし、本作を単なるバカ映画と侮ってはいけないような気もする。というのは、ドラマのエッセンスにきちんとスズメの成長ドラマが存在し、さりげなく律儀な作りになっているからだ。
スパイ活動に身を投じることで彼女は新しい自分を開眼させていく。平凡な日常から特別な非日常へ‥。スズメは様々な出会いと経験を積んで大空へ羽ばたいていく。ここで彼女と正反対の価値観を持つ親友クジャクがキーマンとして効いてくる。対位的な人物相関でキャラクター・アークをきちんと描くあたりは”技あり”といった所だ。ラストではスズメの成長にこちら側も勇気付けられてしまう。
ところで、主役の置かれた状況、主婦の自立といったテーマから、本作はレニー・ゼルヴィガー主演の「ベティ・サイズモア」(2000米)を連想させる。重なる部分は結構見つかるのだが、「ベティ・サイズモア」がブラックなユーモアだとしたら、本作はシュールなユーモアと言えばいいだろうか。微妙なテイストの違いがあるが、どちらの作品も癖があるという点では共通している。