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あなたを抱きしめる日まで

悪しき因習にとらわれた真実の物語。
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「あなたを抱きしめる日まで」(2013仏英)star4.gif
ジャンル人間ドラマ。ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 イギリスに住む敬虔なカトリック信者・フィロミナは娘のジェーンにある秘密を打ち明ける。それは50年前のこと----姦通の罪で修道院に預けられた彼女は、そこで赤ん坊アンソニーを出産した。ところが、修道院は彼女からアンソニーを取り上げて無断で里子に出してしまったのである。フィロミナは今でもそのことを後悔していたのだ。その後、ジェーンは仕事先で元BBCの記者マーティンに出会う。彼女はこの事を記事にしてほしいと訴える。それを受けてマーティンは早速、フィロミナを連れて件の修道院を訪ねるのだが‥。

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(レビュー)
 閉鎖的な修道院で起こった人身売買事件を、被害者の女性の目線で綴った社会派人間ドラマ。実話の映画化である。

 以前見た映画で「マグダレンの祈り」(2002英アイルランド)という作品がある。これは婚外交渉した少女たちがマグダレン修道院(別称:マグダレン洗濯所)に入れられて様々な抑圧、虐待を受けるという映画だった。本作を見てそれを連想した。
 マグダレン修道院は表向きは教義に則った更生施設ということになっているが、実際にはまったく違っていて女性たちに様々な人権侵害を与えてきた収容所だった‥ということが、この映画では語られている。「マグダレンの祈り」によってその実態は明らかにされ、公開当時ヨーロッパ全土は大きな衝撃を受けた。
 
 本作のフィロミナも「マグダレンの祈り」の少女たちと同じような境遇に立たされた女性である。彼女は毎日洗濯の重労働を課せられ、施設から一歩も外に出してもらえず厳しい暮らしを強いられる。そして、愛する我が子アンソニーを奪われてしまう。フィロミナは50年間ずっとこの事を黙っていたが、どうしてもアンソニーを忘れることが出来ず全てを告白する。そして、成長した息子に一目会いたいと思い元BBCの記者マーティンの協力を得ながら捜索の旅に出る。

 映画は、彼女とマーティンのロードムービーとなっている。ラストで判明する修道院の隠蔽体質、悲劇的結末には実にやるせない思いにさせられた。劇中に”邪悪なシスター”という言葉が出てくるが、今回の事件を表するのにこれほどピンとくる言葉もないだろう。神に仕える者が悪魔に魂を売るのだから、これには戦慄を覚えるしかない。

 ここまでの話を聞くと、本作は大変重苦しい映画のように思うかもしれない。しかし、適度にユーモアが挟み込まれているので、事件自体の陰惨さとは裏腹に大変見やすい作品となっている。
 監督はS・フリアーズ。このあたりは流石はベテランと言った感じで、実に手堅い演出で安心して見ることができた。

 そして、このユーモアの最大の肝要は、敬虔なカトリック信者であるフィロミナと無神論者のマーティン。この二人のやり取りにあるように思う。世代や宗教観、性格の違いから来るチグハグな絡みが要所で笑いを生んでいる。

 例えば、フィロミナが自分が読んだ本のあらすじをマーティンに教えてやるクダリは傑作だった。彼女は結末まで全て話してしまう癖があり、マーティンはほとほと困ってしまう。
 2人の関係は、年の功でどうしてもフィロミナの方が一枚上手で、常にフィロミナが上位になる。彼女の旅に付き合わされるマーティンは災難と言えば災難かもしれないが、彼も基本的にお人よしなのでついついフェロミナに対しては何も口答えできない。この関係が終始楽しく観れた。
 尚、本のあらすじを教えるシーンは後の伏線にもなっている。このあたりの洒脱を利かせた作りも大変上手かった。

 その一方で本作には感動もある。フィロミナとマーティンはアンソニーを探す旅をするうちに次第に信頼関係で結ばれていく。その過程が丁寧に綴られていてしみじみとさせられた。

 また、初めはこの取材に余り乗り気でなかったマーティンが、徐々に記者魂を燃え上がらせていく過程も中々感動的だった。落ち目の記者が奮闘していくというドラマには多くの人が感情移入できるのではないだろうか。

 フィロミナ、マーティン。夫々を演じるのはJ・デンチとS・クーガン。J・デンチは緩急をつけた硬軟自在の演技でこのドラマを味わい深いものにしている。
 一方のS・クーガンも中々の好演である。彼は本作で製作と共同脚本を手掛けるという活躍ぶりで、その熱意は存分に伝わってきた。

 一方、物語の展開は非常に流麗で見やすく構成されているが、やや流され気味な個所もあるので、そこは若干気になった。
 例えば、フィロミナが何故今になってジェーンに過去を告白する気になったのか?その決定打となるような理由が見当たらない。ここは何かフォローが必要だったろう。また、中盤に出てくる若きマーティンの秘話も、どうかするとご都合主義に見えてしまう。ここは段階を経て明かすか、そうでなければむしろ省いた方が賢明だったろう。
 このようにシナリオ上、幾つか手薄に感じる箇所があった。ただ、全体的には中弛みすることなく一気に展開されていくので、それほどストレスなく観ることが出来た。第一にこれだけヘビーな題材を陰鬱一辺倒にしなかった所が大変良い。娯楽作品として実に周到に作られていて、誰が見ても楽しめる作品になっている。
[ 2014/04/13 22:52 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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