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少女は自転車にのって

イスラム社会のかすかな光を予感させる青春映画。
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「少女は自転車にのって」(2012サウジアラビア独)星3
ジャンル青春ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 サウジアラビアの首都リヤド。小学生のワジダはクラスで一番のお転婆な少女。ある日、近所に住む少年アブダラの自転車を見て自分も欲しくなる。母親にねだるが、女の子が自転車に乗るなんてもってのほか‥と叱られる。仕方なくワジダは学校で小遣い稼ぎをしながらコツコツとお金を貯めていった。そんなある日、学校でコーランの暗誦コンテストが開催されることになる。それに優勝すれば賞金がもらえるというのだが‥。

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(レビュー)
 少女の瑞々しい成長を通してイスラム社会の実態を描いた青春映画。

 イスラム社会がいかに女性に差別的なのかは自分も一応知っていたつもりだが、まさか自転車に乗ることが禁止されていたとは‥。この映画を見て初めて知った。

 物語は実にシンプルである。主人公ワジダは禁じられている自転車に乗ろうとして色々な試練を乗り越えていく‥という、ただそれだけの物語である。確かに壮大な物語ではないし、心にズシンと響くようなインパクトもない。しかし、このシンプルなドラマの中にはイスラム社会の現在がしっかりと描き込まれている。抑圧に屈せず力強く生きていこうとする少女の姿を通して、イスラム社会の現在を静かに告発しているのだ。このメッセージは心に残る。

 今作は何と言ってもワジダのキャラクターが良い。普通、イスラム社会の女性のドラマというと、苦しい、悲しいを訴えるドラマになりがちだが、この映画にはそういった重苦しさは余りない。唯一あるとすれば、ワジダの母親のエピソードであろうか。これは確かにイスラム社会の悲劇を描いて見せたエピソードである。しかし、これを除けば基本的に今作は瑞々しい青春映画として楽しく見ることが出来る。

 そして、そう見れる最大の貢献は、ワジダのキャラクターにあるように思った。
 ワジダは女性に厳しいイスラムの戒律に反発して自由気ままに生きている10歳の少女である。その姿は実に晴れ晴れとしていて頼もしい。
 例えば、他の皆が顔にベールをする中、彼女だけは素顔で登校する。服装は常にジーンズとスニーカー姿。規則を破って教師に叱られても決してメソメソしない。近所の男の子と喧嘩をしたりもする。ワジダは周囲を気にせず常に前を向いて歩ている少女なのだ。

 我々からしてみれば、本作は遠い異国を舞台にした映画である。しかし、この明るく活発なワジダのキャラクターがその距離を少しだけ縮めてくれる。ここがこの映画のミソだろう。自然と親近感が湧ていくる。

 そして、そんな彼女が禁止されている自転車に乗ろうというのだから、これは実にパンクなドラマである。言わば、今作は型破りなアウトロー映画としても楽しめる娯楽作になっているのだ。

 ラストも良い。ワジダのアップで終わるのだが、その眼差しの先には何があるのか?きっとそれは新しい未来なのかもしれない‥。そんな希望が感じられた。

 ただ、確かにメッセージは崇高であるし、この手の作品の中では今までにないテイストを見せてくれたという意味で新鮮だったが、映画のクオリティについては若干物足りなさを覚えた。
 何しろシンプルで素朴なドラマである。物語の深みは母のエピソードを絡めることで一定の広がりは感じられるが、キャラクターが図式的過ぎて物足りない。
 加えて演出が若干、平板だと思った。例えば、クライマックスの暗誦コンテストには何らかの”事件(アクシデント)”を持たせるなどの工夫は欲しかっただろう。映画自体は丁寧に作られているのだが、漫然と見れてしまう所に物足りなさを覚えた。
[ 2014/04/19 02:20 ] ジャンル青春ドラマ | TB(0) | CM(0)

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