J・カーペンターは枯れず。無難な作りで中々楽しめる。
「ザ・ウォード/監禁病棟」(2010米)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 1966年、放火容疑で逮捕された少女クリステンが精神病院の監禁病棟に収容される。そこには様々な問題を抱えた4人の少女たちが入院していた。ある日、クリステンはシャワーを浴びていた時に謎の怪物に襲われる。しかし、そのことを他の患者や院長に話しても誰も信じてくれなかった。その後、患者の一人が疾走する。怪物の仕業だと考えたクリステンは病院から脱出しようとするのだが‥。
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(レビュー) 精神病院の監禁病棟を舞台にしたサスペンス・ホラー。
監督は約10年ぶりの復帰となる鬼才J・カーペンター。久々のメガホンと言うこともあり、コアなファンには待ってましたと言う感じの新作である。
テイストとしては「ハロウィン」(1978米)や「ザ・フォッグ」(1980米)といった初期時代の作品を思わせるような渋い色調のホラー・サスペンスになっている。とはいえ、ショック演出は今風のスピード感と切れを見せていて、中々魅せてくれる。新しい物を貪欲に取り入れようとする氏の気概が感じられた。
惜しむらくは音楽も担当して欲しかったか‥。彼は自分の作品でしばしば音楽監督を務めることがある。今回は別の人間が音楽を担当している。
クリステンの視座で進行するストーリーも中々よく出来ていると思った。現実と妄想をぼかしながら怪物の正体を追いかけていく彼女の戦いは、一本調子な展開ではあるものの緊張感が持続する。また、彼女自身、過去の放火事件の記憶もあいまいで、観る方としても一体彼女の言葉をどこまで信じていいのか分からない。そこがこの映画の面白い所である。
オチはいわゆる一発ネタ的なものであるが、怪物の正体も彼女の疾患の原因も明かされるので綺麗にまとまっていると思った。
キャストは、クリステンを初め5人の少女たちが、夫々に個性を発揮しながら上手く演じている。その中の一人、エミリーを演じた女優は、あのM・ストリープの実娘だそうである。確かにこうやって見てみるとよく似ている。