ジェイソン・ボーンの戦いを描くシリーズ第2弾。
「ボーン・スプレマシー」(2004米)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) CIAはベルリンで内部の公金横領事件を捜査中だった。ところが、何者かの襲撃によって捜査は失敗に終わってしまう。現場に残されていた指紋から秘密捜査官ジェイソン・ボーンが容疑者として浮かび上がってきた。責任者である女性捜査官パメラは彼の捜査に執念を燃やす。その頃、ボーンはインドで恋人マリーと静かな暮らしを送っていた。しかし、何者かにマリーを殺されてしまう。ボーンは復讐を果たそうと犯人を追いかけるのだが‥。
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(レビュー) 記憶を失った諜報員ジェイソン・ボーンの活躍を描いたシリーズ第2弾。今回はCIAの公金横領事件をきっかけに影の組織との戦いが描かれる。
監督は前作
「ボーン・アイデンティティー」(2002米)のダグ・リーマンからP・グリーングラスに交代している。ダグ・リーマンの演出も決して悪くはなかったが、今回のグリーングラスは元々がドキュメンタリー畑出身の作家である。サスペンスフルなシーンに生々しさが加わり、これが中々に良い。先日見た
「キャプテン・フィリップス」(2013米)や「ユナイテッド93」(2006米)でも感じたことだが、氏の作品の特徴は手持ちカメラやジャンプカットの多用にあると思う。これによってアクションシーンはもちろん、いわゆる作戦会議の場面などでも上手く緊張感が作り出されている。
映像トーンも渋めに統一されており、影のあるボーンのキャラクターには上手くマッチしていると思った。非情なスパイの運命を冷徹に捉えている。
今回、アクションシーンの見せ場は、クライマックスのカーチェイス・シーンとなろう。前作のカー・チェイスも迫力があったが、今回も素晴らしい出来である。ただ、グリーングラスは極端にカットを割るクセがあるので、少しごちゃごちゃしすぎな感じは受けた。このあたりは好みが分かれるかもしれない。
また、今回はスパイ物らしく頭脳合戦で見せるシーンもある。これも見応えがあった。例えば、ボーンがパメラに接触する方法は今時の映画にしては大変地味ではあるが、なりふり構わず銃を撃ちまくるよりも、よほど諜報員らしくて好印象である。
一方、ストーリーに関しては正直物足りなかった。前半早々に、事件の黒幕やからくりが想像できてしまい面白みに欠ける。もう少し情報を小出しにしてくれた方が推理する楽しみが出てくるのだが、そこは残念だった。
尚、前作で酷評したヒロイン、マリーを演じたF・ポンテは、映画が始まって早々にドラマから退場してしまう。彼女を失ったことでボーンの復讐が始まるというドラマで、今回は女っ気がまったくなくなってしまった。賛否はあるかもしれないが、逆に言うとこのシリーズの本文は諜報員の孤独な戦いである。ハードなテイストが前面に出たことで、個人的にはこれで正解だったように思う。