一応シリーズは一旦終了するものの何だかモヤモヤが残ってしまう。
「ボーン・アルティメイタム」(2007米)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 自分がなぜ殺人マシーンになってしまったのか?その記憶を手繰り寄せていたボーンは、ある日イギリスの大手新聞に自分の記事が掲載されたことを知って驚く。彼は担当記者に接触して自分の過去に繋がる手掛かりを得ようとする。丁度その頃、CIAもこの情報をキャッチしていた。彼らも早速、現地に捜査班を送り出した。しかし、記者は何者かによって殺害されてしまう。ボーンはどうにかその直前に自分の過去にまつわる情報を手にする。その先で彼は恐るべき極秘計画の存在に突き当たる。
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(レビュー) 秘密諜報員ジェイソン・ボーンの戦いを描いたシリーズ第3弾。
全3作の予定で始まった本シリーズは今回で一応の完結を見る。但し、その後主演がM・デイモンからJ・レナーに引き継がれてシリーズは継続されている。それはまた別の話ということになるらしい。
さて、今作でいよいよボーンが何故諜報員になったのかが明らかにされるのだが、終わってみれば意外にもストレートなオチで肩透かしを食らってしまった。ここまで引っ張ってきたのだから、さぞかし深い闇でもあるのかと思ったが、蓋を開けてみればよくあるネタである。
J・フランケンハイマーが監督した映画で「影なき狙撃者」(1962米)という作品がある。個人的には、今回の事件のからくりは、あの作品に出てきた洗脳計画によく似ていると思った。したがって、何か新しい物を見せてくれるのではないか‥と期待した自分にとっては、今回のオチは既視感が拭えず少々尻つぼみという感じがしてしまった。加えてボーンの洗脳に論理的な説得力が乏しいのもいただけない。これでは見終わっても余り釈然としない。
監督は前作に引き続きP・グリーングラスが務めている。今回も短い編集やジャンプカットを多用しながら上手く緊張感と疾走感を出していると思った。余りにも画面が動くので少々見辛い場面もあったが、全体的には前作同様、面白く見れた。
特に、ロンドンの駅を舞台にした追跡劇のスリリングさは白眉の出来栄えである。複雑なロケーションを活かした鬼ごっこに手に汗握った。もっとも、あれだけの大人数で監視していたのに目の前を通るボーンに誰も気付かないのはどう考えてもおかしい‥という突っ込みはあるのだが‥。
また、後半のバイク・アクションも新鮮で良かったと思う。このシリーズは必ずカー・チェイス・シーンが出てくるのだが、その全てが素晴らしい。今回もスピード感があって興奮させられた。
それにしても、3部作を通して見て思ったのだが、結局ボーンのアイデンティティ獲得というドラマはこの第3作と第1作に集約されるような気がする。そう言う意味では、前作の話は余り意味がなかったのかな‥という感じがしてしまった。実は、この事は第2作を見ている最中から薄々予感はしていた。結局、前作はボーンとCIA女性諜報員パメラの関係を紹介するために作られたような話で、全体を通して見れば大したドラマはない。
恋人マリーの死もそれほどボーンの心の咎にはなっているようには見えないし、彼女の弟(D・プリュールが1シーンのみの出演というのは勿体なかった)に対する悔やみも実感として余りこちら側に伝わってこない。何となく軽く映ってしまった。
これなら第2作を切りつめて第3作のドラマを充実させた方が良かったのではないか‥。そんな気がしてしまった。ボーンが自分の過を知ったことで、どういう人生の選択をするのか?そこまでドラマを深く追求してみても面白かったように思う。期待が高かったせいか何となく食い足りない完結編だった。