飛行機乗りたちの群像ドラマ。
「コンドル」(1939米)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション・ジャンル古典
(あらすじ) 南米港町の中に小さな航空郵便の会社があった。ニューヨークのショーガール、ボニーは旅の途中でこの町に立ち寄り、気前のいい二人の航空士ジョーとレスに食事に誘われる。彼らと和気あいあいと食事をしていたところに、二人のボス、カーターがやって来た。彼の傲慢な態度にボニーは腹を立てた。その後、霧の中をジョーが郵便物を運ぶために飛び立った。しかし、着陸に失敗し飛行機は爆発炎上してしまう。現場を目撃していたボニーは悲しみと恐ろしさに震えた。その傍らでカーターは悲しむどころか彼の未熟さを責めた。その言葉にボニーは不快感を覚えたが、同時にどこか芯の強さも感じられた。こうして彼女はカーターに惹かれていくようになる。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 危険な航空便の仕事に命を懸ける飛行機乗りたちのドラマ。
監督はH・ホークス。今にも潰れそうな航空郵便会社に集う個性溢れる男たちの衝突と友情のドラマは、いかにもホークスらしい体育会系ノリな展開で綴られている。見終わった後には充足感を味わえた。
中でも、途中から彼らの仲間に加わるキルガロンというキャラクターは、周囲に波風を立てるキーマン的存在で面白かった。
彼はメンバーの一人キッドと因縁の関係にあり、過去の女を巡ってカーターとも複雑な感情で対立していくようになる。ポーカーフェイスな面構え、不敵で尊大な振る舞いは、アットホームな雰囲気の中で一人だけがカラーが違う。しかも、操縦の技術は他の誰よりも高く、情熱的で明朗なカーターのライバルとして実にメリハリが効いていた。更に、彼は終盤で主役のカーターを凌ぐほどの活躍を見せる。ドラマのバランス云々を抜きにして彼の存在は際立っていた。
そして、もう一人印象に残ったのはキッドというキャラクターである。老境に差し掛かった航空士としての苦悩が中盤のカーターとのやり取りから伺える。キルガロンの出現で仕事を奪われていく不遇は、観ていて辛かった。
正に全編男のドラマとなっているが、一方のヒロインに目を向けると、こちらはやや存在感が薄い。
まず、ボニーの心理変化が弱いのが残念だった。カーターに惹かれていくまでのドラマが浅薄で、このロマンスは説得力に欠ける。前半で彼女の父親の話が出てくるが、このあたりを深く掘っていければ、危険な仕事に従事するカーターへのシンパシー、それが恋心に転じていくというシナプスを上手く構築できたかもしれない。中盤以降、キルガロンの登場で、益々彼女の出番が少なくなってしまったというのも問題である。また、終盤の”あるアクシデント”も彼女の軽薄さだけが強調され、ヒロインとしての魅力を半減させてしまっている。描くのであればもう少し別の方法があっても良かったような気がした。
もう一人のヒロイン、キルガロンの妻ジュディは、夫の信用を得られない可愛そうな主婦という役所である。こちらはカーターとは近すぎず離れずの位置をキープし、必要以上に中心のドラマに関わってこないため、可もなく不可もなくといった感じである。これも描き方次第では、カーターとボニーの間に割って入る悪女的な役回りに発展させることも可能であるが、そこまでしてしまうとドラマは益々散漫になってしまうので、無理に詰め込まなかったのは正解だったように思う。リタ・ヘイワースが切なげに演じていてビジュアル的には文句ない。
アクション的な見せ場としては、山岳地帯に着陸を試みる中盤のシーンは迫力があった。ただ、そこを除けばこれといって印象に残る航空シーンはない。尚、序盤と終盤のミニチュア撮影は余りいただけなかった。当時の技術を考えればこれも止む無し‥といった所か。