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はなれ瞽女おりん

瞽女の半生を綴った人間ドラマ。
はなれ瞽女おりん [DVD]はなれ瞽女おりん [DVD]
(2005/05/27)
岩下志麻、樹木希林 他

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「はなれ瞽女おりん」(1977日)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 大正時代、人里離れた海辺で盲目の孤児おりんが発見された。薬売りの行商人に引き取られた彼女は瞽女(ごぜ)の一座に預けられ三味線を仕込まれる。数年後、一人前の瞽女になったおりんは一座と共に旅に出た。ところが、おかんの禁忌を破ったために一座を追い出されてしまう。はぐれ瞽女となったおりんは、脱走兵の平太郎と出会い恋に落ちるのだが‥。

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(レビュー)
 瞽女(ごぜ)とは盲目の女芸能者のことである。今作の主人公・おりんは先天的な盲目で母親に捨てられた。そこを親切な行商人に拾われて瞽女達が暮らす家に預けられる。彼女はそこで三味線と歌の芸を仕込まれ、一人前の瞽女、つまり金や食べ物を貰いながら各地を回る旅一座の一員となる。

 ちなみに、同年には新藤兼人が監督した「竹山ひとり旅」(1977日)という作品がある。あれも同じように目の見えない三味線弾きの物語だった。同じ年の公開されたということもあり、どうしても比較してみたくなる。今回はこの2作品について少し分析してみたいと思う。

 まず、同じ盲目の三味線弾きという設定を題材にしつつも、両作品には大きな違いがある。あちらは実在の人物を描いた伝記ドラマだったのに対し、こちらは完全にフィクションである。今作の方が創作物ゆえのドラマチックさがある。

 そして、もう一つ両作品には大きな違いがあるように思った。それはキャラクターの性別である。「竹山ひとり旅」は、踏まれても只では起きない奮闘する”男”のドラマだったが、本作はか弱き”女”である。そこには女性でしか描けないドラマがある。
 では、具体的に女性の視点でしか描けないドラマとは何なのか?ということだが、それは男になくて女にある物。ずばり”純潔”である。

 女性は常にセックスというものに捕われながら生きる存在のように思う。肉体を売って生活の糧とする女性もいれば、セックスをして子供を生んで母親となる女性もいる。つまり、女性にとってのセックスは、その人の人生を左右するほどの大きな意味を持っている。
 それに対し、男にとってのセックスは実に軽い。その証拠に、本作に登場する男たちは、盲目の旅一座の女なんて一晩遊んでポイと捨てればいい‥くらいにしか考えていない。彼らは、おりん達をそんな風にしか見ていないのだ。これは女性にとってのセックスに比べたら実に軽いセックスと言える。

 だからこそ、一座のおかんは客との性交渉を固く禁じている。瞽女は神仏に仕える巫女なのだから決して身体を汚してはならない‥という、しきたりで一座を守っているのだ。
 ただ、そうは言っても、所詮女は男に比べれば肉体的には非力である。ましてや、目が見えない彼女たちは、男たちの前ではほとんど無力に近い。結局、おりんは客と関係を持ってしまい一座から追い出されてしまう。ここでの問題は、おりんが”純潔”を守れなかったという現実である。実に残酷な話であるが、これは「竹山ひとり旅」には無い、女性だからこそ描けるドラマのように思った。

 やがて、おりんは脱走兵の平太郎と出会い恋に落ちる。ここでの葛藤も中々面白く追いかけることが出来た。
 彼と結ばれて普通の女として生きるか、それともこれまで通り”はぐれ瞽女”として生きるか。その葛藤がねちっこく描かれている。そして、その決断はラストショットで明示される。これには妙に納得させられた。大変悲しい結末であるが、"はぐれ瞽女″となってしまった彼女に残された選択は”それ”しかなかったのだろう。

 物語は、現在と過去を交錯させながら進行する。軽快に進むので退屈するようなことはないが、時制の往来が若干ドラマを散漫にしてしまっているような気がした。この際、時系列にストーリーを展開させた方が感情移入しやかったのではないだろうか。これでは中々物語に集中できない。
 それと、全体のドラマを考えた場合、不要なエピソードが2,3あった。このあたりも刈り込める感じがした。そうすればもっとコンパクトにまとめることが出来ただろう。

 このようにシナリオに関しては若干不満が残る内容だった。
 ただ、その一方で映像については文句なく素晴らしかった。名手・宮川一夫が切り取る極寒の大地、荒れ狂う海、荒涼とした風景が作品にスケール感を与えている。
 特に、おりんが湖で体を洗うシーンの陶酔的な色使いといったらない。黄金色に輝く水面とスモークが幻想的な美しさを醸している。自分がこれまで見てきた宮川カラー作品の中では、本作は最も見応えのある”映像作品”となった。

 監督は篠田正浩。堅実な演出を見せているが、時々作為的な演出が見られるのが引っかかった。例えば、雪原の赤い花びらやラストの赤い着物等、寓話色を強調したかったのだろうが、少し狙いすぎである。全体がリアリティを重視した作りになっているのでかえって違和感を持ってしまった。とはいえ、それ以外は概ね堅実に演出されているので全体としては安定感がある。
[ 2014/05/31 02:06 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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