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心中天網島

篠田正浩監督のラジカルな作家性が色濃く出た異色作。
心中天網島 [DVD]心中天網島 [DVD]
(2005/04/28)
岩下志麻、中村吉右衛門 他

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「心中天網島」(1969日)star4.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 商人の息子・紙屋治兵衛は、愛する女郎・小春を身請けするために借金を背負っていた。しかし、豪商の太兵衛も小春のことを気に入っており、ぜひ身請けしたいと申し出る。小春がこれを拒むと太兵衛は逆上し、乱闘騒ぎを起こして辺りを騒然とさせた。そこに通りがかりの侍がやってきて小春を救う。小春は事の次第を打ち明けて、今後も自分のことを守って欲しいと彼に頼んだ。それを偶然目撃した治兵衛は、二人の仲を疑う。実は、その侍は治兵衛の兄・孫右衛門の成り済ましだった‥。

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(レビュー)
 近松門左衛門の言わずと知れた同名戯曲を斬新な映像で綴った作品。

 序盤の侍の見顕し、おせんと小春の意外な結びつき等、物語の構成が実に巧妙に仕組まれており、二転三転する展開も含めて最後まで面白く見ることが出来た。ただ、登場キャラが揃ってエキセントリックな行動に出るので、決してリアリティのある物語ではないと思った。そこはある程度、割り切って見るしかない。

 例えば、治兵衛が小春を切る所や、おせんの父が噂を耳にして彼女を連れて帰る所などは、いくらなんでも感情過多で見ていてついていけない部分である。

 今作の見所は何と行っても斬新な演出となろう。
 映画は物語のバックステージから始まり、いきなり度肝を抜かされる。その後も各所にシュールな映像演出が登場してきて、いわゆる普通の商業映画とは一線を画した不思議なテイストを持った作品となっている。

 中でも、一番インパクトに残ったのは、至る場面に登場する黒子たちである。彼らは人物の所作や舞台装置の補助役を務めながら、その空間をまるで演劇舞台そのもののように見せている。それによってこの映画には一種異様な不思議な空間が形成され、変な言い方かもしれないが、映画と演劇を融合させたかのような奇妙な面白さが感じられた。
 また、所々には長回しも登場し、これもいかにも演劇的演出と言っていいだろう。周囲のモブの動作をストップさせて主要人物のみでドラマを進行させる演出も、いかにも舞台の上で繰り広げられる演劇的演出である。

 監督は篠田正浩。元々の原作が人形浄瑠璃であることを鑑みれば、こうした数々の斬新な演出が、原作の再現を狙った物であることは何となく想像できる。
 篠田正浩の作品は、後年のいわゆる商業的娯楽作品しか見ておらず、今回のようなラジカルな側面は初めて見た。彼の別の一面を見た思いである。後年のマイルドなテイストからは想像もつかない摩訶不思議なテイストに魅了された。

 ちなみに、美術セットも中々凝っている。いわゆる日常空間とかけ離れたアーティスティックな室内装飾が、どこかこの世の物とは思えぬ不気味な空間を形成している。

 また、不気味という事で言えば、今作は全編モノクロで撮影が行われている。これも男女の愛憎のどす黒さを際立たせていて中々良いと思った。特に、終盤の墓場のシーンは何とも言えない薄気味悪さを覚えた。しかも、そこで行われる”行為”が明らかに常軌を逸した変態的行為に他ならず、この悲恋をことさら異常な物に見せている。
 撮影監督は名カメラマン成島東一郎である。「紀ノ川」(1966日)でも述べたが、彼が作り出す奥行きのある画面設計は今回も際立っており、篠田監督のラジカルな感性を映像面から支えている。

 一方、脚本には詩人の富岡多恵子、作曲家の武満徹といった異色の面子が参加している。武満は音楽も担当していて、浄瑠璃をベースに敷いた情熱的で抒情的なセリフを、彼が奏でるドライな音楽が上手く中和していると思った。武満自信が脚本に参加したことで、音楽とセリフが面白いバランスで成立している。

 キャストでは、小春とおさんの二役演じた岩下志麻の演技が見応えあった。女郎と女房という、女の二面性を表現した所は見事である。
[ 2014/06/03 00:46 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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