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エンジェリック・カンヴァセーション

異才D・ジャーマンの私的フィルム。この浮遊感に身を委ねて見るべし。
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(2000/11/27)
ポール・レイナルド、フィリップ・ウィルアムスン 他

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「エンジェリック・カンヴァセーション」(1985英)hoshi2.gif
ジャンルロマンス
(あらすじ)
 どことも分からぬ荒涼とした大地。複数の男たちが何かを求めて彷徨っていた。やがて男たちは洞窟の中で愛し合う。そして再び荒涼とした大地へ帰っていくのだった‥。

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(レビュー)
 イギリスの異才D・ジャーマン監督による幻想的な作品。

 ストーリーはほとんど無いに等しく、基本的にはイメージ映像のような作りになっている。おそらく多くの人が、何を言いたいのか分からない‥となるだろう。これはD・ジャーマンという作家のバックボーンを知っていないと厳しい映画かもしれない。

 自分は全てではないがD・ジャーマンの作品を何本か観ている。彼が辿ってきた人生も少しだけ知っているので、その中でこの映画が何について描いているのか?何を訴えているのか?ある程度想像できる。

 D・ジャーマンはゲイであることを公言し、52歳で亡くなった短命な作家である。最後は私的フィルムの極みとも言うべき「BLUE ブルー」(1993英日)という作品を残している。この「BLUE ブルー」は自身の失明の危機との闘いを描いた75分に及ぶ実験的作品で、何と全編青い画面を写しただけの作品である。彼の映画作りのスタンスは、この「BLUE ブルー」に代表されるように常に自己表現の場なのである。
 そして、彼は大学で美術を専攻してから映画界に入ってきた映像派の才人である。元々アート志向の強い人で、したがって映画作りもエンタテインメントを目的とするのではなくアートを目的としている。

 こうしたバックボーンを理解した上で本作を見ると、作品が放つメッセージも何となく理解できるのではないだろうか。
 つまり、ここに登場する愛し合う男たちはゲイだったジャーマン自身の自己投影に他ならない。そして、彼らが荒野をさ迷い歩く姿は、社会から阻害される自身の孤独を表現しているのだろう。彼の他の作品を見ても同性愛というテーマは必ずと言っていいほど入っており、この「エンジェリック・カンヴァセーション」にもそれは色濃く反映されている。紛れもなく本作はD・ジャーマンという作家の本質がダイレクトに表現された作品と言っていいと思う。

 映像的に見ても本作は非常に美しい。他の作品と比較しても、ここまで明るさに溢れた作品というのは珍しいのではないだろうか。実在した同性愛の画家カラヴァッジオの半生を描いた「カラヴァッジオ」(1986英)、中世時代の王の退廃的な愛を描いた戯曲の映画化「エドワードⅡ」(1991英日)等で見られた深い”闇”に対するこだわりも一部で見受けられるが、それすらも”光”に相殺されて禍々しさは余り感じられない。むしろ、”闇”は同性愛者が逃げ込む場所であり、どこか哀しみすら誘発する。

 そして、ジャーマンの映像の特徴と言えば、フィルムとビデオを巧みに混在させた映像処理である。今回は8ミリをブローアップしており、より”私的”映像の匂いが感じられた。言ってしまえば、低予算をカバーするための苦肉の策なわけだが、これが奏功し彼にしか作れない独特の映像世界が形成されている。

 尚、今作にはセリフはない。あるのはイギリスの名優J・デンチが朗読するシェイクスピアのソネットが映像に被さるだけである。シェイクスピアのソネットは愛について謳った詩集だが、ここではそれが愛し合う男たちの映像に被さることでジャーマンの同性愛に対する賛歌のように聞こえてきた。
[ 2014/06/20 01:01 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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