老人と少年たちのひと夏の交流を描いた児童映画。
「夏の庭 The Friernds」(1994日)
ジャンル青春映画
(あらすじ) 小学生の仲良し3人組、木山、河辺、山下は、山下の祖父が死んだことがきっかけで人の死について興味を持つようになった。そこで近所に住む風変わりな老人・喜八が死ぬのを見ようと、彼を観察することにした。初めは邪険にされる木山たちだったが、喜八の家のごみを処分したり、庭の草木を伐採するうちに次第に気に入られていく。
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(レビュー) 偏屈爺さんと小学生達のひと夏の交流を、瑞々しいタッチで描いた児童映画。同名原作を名匠・相米慎二が監督した作品である。
結論から言うと、相米慎二らしい祝祭感が中途半端であるし、終盤の展開が想定内で個人的には今一つだった。また、主役の3人組の演技も鼻に付いてしまいダメである。
そもそも木山たちが喜八にまとわりつく動機が弱いと思った。この年頃の子供が死について興味を抱くというのは何となく理解できるが、そのきっかけが山下の祖父の死というのはどうだろう?確かに山下にとっては大きな事件だったかも知れない。しかし、他の二人にとっては、さほど大きなインパクトがあるとは思えない。ここは彼らの好奇心を揺さぶるような、もっと説得力を伴った大きな事件を用意して欲しかった。
さて、相米慎二と言えば長回しである。今回も所々にそれが登場してくる。例えば、喜八の戦争体験の告白は、演じる三國連太郎の熱演もあり、中々の見応えが感じられた。それを聞いて怖がる子供たちの演技も良かったし、外が暴風雨というのもシーンの迫力を増している。ガラス窓の効果的な映像演出も技ありであった。
ただ、ここ以外となると、これといった印象に残る長回しは無い。彼の作品は何本か見ているが、他の作品と比べてしまうと映像的なテンションの高さが少なくどうしても物足りなく感じてしまった。
一方、真夏の清々しい光景を切り取った映像は申し分ない。
特に、物語の舞台となる喜八の家の庭は、このドラマにとって重要な景観である。そこには草木が生い茂り、まるで人里離れた未開の地のようである。もちろんこれは、浮世離れの偏屈爺さんという彼の人間性を表象したものだろう。
そして、この荒れ果てた庭は、木山たちの手によって徐々に美しい庭園へと変貌していく。つまり、これは喜八のキャラクター変化。死んだような隠遁生活を送っていた老いぼれから、生きる活力を取り戻した老人への変遷を暗に示しているのだ。ドラマと絶妙にリンクしながら美しい景観に変わっていく所に癒された。
また、夕焼けをバックにした電車の車内シーンは、どこか幻想的な印象が付帯し、これも面白いロケーションだと思った。
ラストの映像も良い。全てが朽ち果てていく所に一抹の郷愁が感じられる。見終わった後に深い余韻が残った。
一方、幻想的と言えば、前半の病院のシーンは突然ホラータッチに切り替わり驚かされた。喜八を追いかけてやってきた木山が病院で迷子になってしまうのだが、その不安を過剰に演出し過ぎである。全体の雰囲気から余りにもかけ離れていてバランスが悪い。何故にここだけ全体から浮いた演出にしてしまったのか‥理解に苦しむ。