金子修介版ゴジラ。白目の凶悪ゴジラが見所。
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(2001日)
ジャンル特撮・ジャンルアクション
(あらすじ) グアム島沖でアメリカの原子力潜水艦が消息を絶った。その救助に向かった調査艇は海底で巨大な生物を目撃する。防衛軍の立花准将は、それが50年前に上陸したゴジラの再来ではないかと考えた。一方、立花の娘・由里はローカルテレビ局のキャスターとして新潟を訪れていた。その取材中に巨大な地震に遭遇する。現場近くではトンネルが崩落し多数の死傷者が出た。その頃、鹿児島でも謎の海難事故が発生する。由里はサイエンスライター・武田の協力を得て護国聖獣伝記という民間伝承を知る。彼女は一連の事件にそれが絡んでいるのではないかと睨む。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 「ゴジラ」シリーズ第25作目。平成に入ってからは9作目にあたる本作は、あの平成ガメラ・シリーズでメガホンを取った金子修介が監督を務めている。
平成ガメラ・シリーズは子供は元より大人が見ても十分楽しめる本格的な娯楽映画だった。その金子監督が「ゴジラ」を撮るというのだから期待は高まる。
実際、見てみると今回のゴジラは白目を剥いた極悪なデザインとして造形されており、これまでのゴジラが甘っちょろく感じられるほど、完全にヒール・サイドのモンスターとして確立されている。これは、かつて子供たちのアイドルだったガメラを人類の敵として確立させた平成ガメラ・シリーズと同じやり方である。
そして、今回そのゴジラと戦うのは、従来は敵役だったキングギドラ、そしてゴジラに並ぶほどの人気を誇るモスラ、何とも渋いキャスティングのバラゴンである。映画のタイトルには記述されていないが、ここでバラゴンを持ってきたというマッチメイクが怪獣映画ファンの心をくすぐる。
映画は、ゴジラの破壊活動と、これら護国聖獣の復活を軸にしながら展開されていく。前半はバラゴンとの戦い、後半はギドラ&モスラとの戦いが派手に繰り広げられている。いわゆる日本特撮のお家芸、着ぐるみプロレスだが、この重量感は中々の物である。唯一残念だったのは、クライマックスの戦いが若干だれたことである。ギドラの復活がくどすぎる。ここはせめて1回の復活にして欲しかった。
そんな中、特撮場面で特に印象に残ったのは、バラゴン登場のシーンとゴジラ上陸のシーンである。人間の視点を意識したアングルが多用され怪獣の巨大感がよく出ていた。
また、今作にはブラックなタッチが随所に登場する。これも子供よりも大人向きなユーモアで面白かった。
例えば、暴走族や海で遊ぶガラの悪い若者たちを容赦なく殺したり、「バラゴン可愛い~」などと呑気に記念撮影をしているカップルを踏み踏みつぶしたり、とにかく人の死を容赦なく描いている。極めつけは、逃げ遅れた入院患者の女性をゴジラが尻尾で吹き飛ばすシーンである。ホッと安心させておいて、その後に追い打ちをかけるという意地の悪さが中々良い。
一方、人間ドラマの方は、主要キャストの演技に不満が残った。彼らのせいで、せっかくの淡い父子の情愛が台無しである。もう少しキャストがしっかりしていれば、普通に泣ける父娘のドラマになっていただろう。
また、由里の取材をサポートする武田の存在感の薄さも致命的である。彼は中盤でドラマから退場し、終盤まで暫くの間、蚊帳の外状態に置かれる。そして、クライマックスに都合よく再登場して由里を助けるのだ。これでは何だか取ってつけたように見えてしまう。
また、中盤で由里は自転車に乗ってゴジラを追いかけるのだが、これはいくらなんでも乱暴な展開であろう。せめてここは武田の車に同乗して追いかる‥とするべきだったのではないだろうか?そういった意味でも、武田のドラマへの絡ませ方が甘いと感じた。
彼ら以外のサブキャストについては概ね好印象である。特に、佐野史郎のコテコテな役作りには笑わせてもらった。
また、大和田伸也の「一体どうなってるんだ!!」というセリフには何度も笑ってしまった。彼はほとんどこれしかセリフがないが、無能な作戦司令官とは大概そうである。
一方、シリアスな演技を貫く南果歩の演技には安定感が感じられた。やはりこうした硬質な演技が出来る人がいると、映画のクオリティも全然違ってくる。
その他、1シーンしか登場しないチョイ役も含め、中々の曲者が揃っていて楽しめた。