ハリウッド版「ゴジラ」。この迫力はぜひスクリーンで!
「GODZILLA ゴジラ」(2014米)
ジャンルアクション・ジャンルSF
(あらすじ) フィリピン諸島の採掘現場で謎の巨大痕跡が発見される。現場に急行した芹沢博士は、それを見て得体の知れぬ不安に襲われる。丁度その頃、日本では大地震による原発事故が発生した。施設で働く科学者ジョーは、それによって愛する妻を失ってしまう。それから15年後、ジョーの息子フォードは米海軍に所属し、妻と子供と仲睦まじく暮らしていた。そこに1本の電話がかかってくる。ジョーが原発事故の立ち入り禁止区域に入って逮捕されたというのである。早速、彼は父を迎えに日本へ飛ぶ。そこで再会した父は、今でもあの事故の原因を独自に調査していた‥。
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(レビュー) 日本が世界に誇るキャラクター”ゴジラ”をハリウッドが映画化した作品。
「GODZILLA ゴジラ」と言うと、何と言っても1998年に製作されたエメリッヒ版の「GODZILLA ゴジラ」(1998米)を真っ先に思い出してしまう。あの時のゴジラは、日本人が慣れ親しんだ”ゴジラ”からかけ離れたデザインだったので初見時に失望した人も多いと思う。自分も確かにそうだった。ただ、既存の「ゴジラ」シリーズと切り離して見れば、あれはあれでモンスター・パニック映画としては中々派手に出来ていたと思う。確か興業的にもかなりの好成績を残したはずである。
しかしながら、あのゴジラは、やはりかなり多くのファンから不評だったようで、その年のラズベリー賞では各主要部門でノミネートされた。そして、シリーズ化もされないまま闇に葬られてしまった。
今回の「GODZILLA ゴジラ」はそれをリブートする意味もあったのだろう。ゴジラのデザインを東宝ゴジラのように刷新して一から出直しを図っている。
実際に見てみるとゴジラの造形は我々が長年慣れ親しんだ、あのデザインにかなり近づいている。モーションアクターの名優A・サーキスが作り出した”動き”も本家ゴジラを意識したもので、エメリッヒ版ゴジラのような恐竜的な動きではない。あくまで我々が見てきたゴジラのそれになっている。
ド迫力のアクションシーンも派手な演出が施されていて興奮させられた。何と言っても、敵怪獣ムートーとのプロレスを真正面から描いている所が凄い。まさかハリウッドが誇る最先端技術でこんなものが見れるとは‥。昨年見た
「パシフィック・リム」(2013米)でも”巨大怪獣”対”巨大ロボット”という戦いを見せられたが、正直な所、夜や深海のシーンばかりだったので見たいものが今一見えない‥というフラストレーションが残った。それに比べると、今回のゴジラは明るい日の下でも戦いを繰り広げている。怪獣映画としては、「パシフィック・リム」を一歩前進させたという感動で大いに興奮させられた。
ただし、今回の敵怪獣ムートーのデザインは個人的には今一つだったが‥。
少なくとも東宝ゴジラシリーズに登場した怪獣とは明らかに異なるラインの造形で、どちらかと言うとエイリアンなどのデザインに近いという感じである。せっかくゴジラを本家に近づけたのだから、敵怪獣の造形もそれに照らし合わせたような物にしてほしかった。まぁ、このあたりの感覚はアメリカ人の感覚なのだろう。
このように、今作は怪獣映画としては中々頑張って作られていて、映像的には様々な点で見応えが感じられる作品となっている。都市を破壊する様子、怪獣の格闘、ゴジラの全貌を中々見せない人間目線からの絵面等、ハイレベルな映像は少なくとも日本のゴジラ・シリーズをはるかに凌駕する出来栄えである。
特に、ハワイに上陸するシーンの臨場感は特筆に値する。津波に逃げまどう人々の姿を人間目線できちんと映像として出しておいてから、仰ぎ見るようにして怪獣が登場する‥という”段階”を踏んだ演出の緻密さ。こいうのは、お金をかけられるハリウッドだからこそ出来る芸当だろう。日本映画でこれをやってしまうと、どうしてもチープになってしまう。
一方、ストーリーの方は、前半はよく出来ていたと思う。記録フィルムのような映像でゴジラの実在感をそれとなく示すオープニング・タイトル、ウェット感で押しまくる夫婦のドラマ、そして巨大怪獣ムートーの謎を解明していくサスペンス。様々な伏線を小出しにしつつ、後半のアクションまで引っ張っていってる。
もっとも、細かなことを言うと色々と突っ込みは入れたくなる。
例えば、ジョーとフォードの関係は一体どういう変遷を経て今に至ったのか?芹沢博士の研究とは一体何なのか?ムートーの卵を隠してあった巨大な施設。あれはどういう機関がどういう経緯で作り上げたのか?これらは後半で判明するかと思いきや、全てぼやかされたまま終わってしまう。見終わった後に、これはかなり問題のあるシナリオだと思った。
加えて、本作は後半から更にガタガタな作りになっていく。一々触れていたらきりがないので割愛するが、一つだけどうしても捨て置けないことがある。それはクライマックスの締めくくり方である。ネタバレをしたくないので敢えて伏せておくが、アメリカ人には核爆弾の怖さが全然分かっていないと思った。これは以前見た
「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(2012米)にも言えることである。
いくらエンタテインメントだからと言っても、核の恐怖をこうも安穏と描いてしまっては、どうにも乗りきれない。「ダイ・ハード/ラスト・デイ」はバカ映画として割り切って見ているからまだ笑って許せるが、今作における核の恐怖とはゴジラ誕生の秘話にも繋がるシリアスな部分である。それをいとも簡単に、このような形で処理してしまったのは非常に残念である。
キャストでは特に大物俳優などは出てないが、堅実に揃えられていると思った。強いて言えば、J・ピノシュがあっという間に退場してしまったのは残念だった。
それと、同じ日本人としては、渡辺謙にもう少しドラマを演じさせる場面が欲しかったか‥。彼は父の死というトラウマを抱える、悩める科学者である。その心中をもう少し広げるようなドラマがあっても良かったかもしれない。