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フェイズ IV/戦慄! 昆虫パニック

この撮影はお見事!
フェイズ IV/戦慄! 昆虫パニック [DVD]フェイズ IV/戦慄! 昆虫パニック [DVD]
(2014/06/25)
ナイジェル・ダヴェンポート、リン・フレデリック 他

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「フェイズⅣ/戦慄!昆虫パニック」(1973米)星3
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 蟻の異常繁殖を調査するために砂漠に建てられた研究所にやってきた二人の科学者ハッブスとジム。彼らはそこで平穏に暮らす一家に遭遇する。ハッブスたちは避難を勧告をするが、彼らはそれを無視して居座り続けた。そして、その夜、彼らは大量の蟻に襲撃された。ただ一人生き残った少女ケンドラを連れてハッブスたちは研究所に避難する。

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(レビュー)
 人間と蟻の戦いをドキュメンタルに綴った異色のSFサスペンス作品。

 監督はヒッチコック映画のタイトルデザインを手掛けたことでも有名なS・バス。今作は彼の初監督作品である。スタイリッシュな感性はすでに多くの人々が認める所であるが、果たして映画監督としての才能はどうか‥そのあたりを興味深く見てみた。

 しかし、結論から言うと、この映画は少し特殊な作りになっているので、彼の演出手腕が如何ほどかは中々計り知れない。蟻の視点で描く映像が余りにも強烈で、そのほかの部分が余り印象に残らないのだ。これはどちらかと言うとネイチャー・ドキュメンタリーに近い感覚で見るべき映画なのかもしれない。

 物語は、今作の主人公である科学者のナレーションを軸にしながらドキュメンタリータッチで進行する。フェイズ(局面)Ⅰ~フェイズ(局面)Ⅳに至る経過を淡々と綴るのみなのだが、それがかえって不気味さを煽る。

 丁度、連想されるのが、宇宙から飛来した謎のウィルスとの戦いを描いたM・クライトン原作の「アンドロメダ…」(1971米)という作品である。あれも科学的考証に基づきながらウィルスとの戦いを淡々と綴った傑作だった。今回の「フェイズⅣ/戦慄!昆虫パニック!」には、それと似たようなテイストが感じられる。B級臭のするサブタイトルがつけられているが、非常に硬派なSF映画になっていると思った。

 そして、今作の見所は何と言っても、マイクロ撮影で捉えられた蟻の活躍である。よくぞこんな映像を撮ることが出来たものだ‥と感心させられた。蟻の習性を知っていなければ、ここまで綺麗にカメラに収めることはできまい。とにかく蟻の姿が緻密に描かれている。

 例えば後半、蟻が大量に研究所に侵入してコンピューターを破壊しようとするシーンがある。ここでハッブスが持ち出すのは蟻の天敵であるカマキリである。鼠退治をする猫のようにカマキリをコンピューターに仕込んで蟻を殲滅しようとするのだ。カマキリと蟻の戦いが好感度のマイクロカメラによってスリリングに撮られている。完全にミクロの世界に引き込まれてしまった。
 蟻の葬列シーンもドラマチックな映像だった。ハッブスたちが散布したガスで蟻は掃討される。その死骸を生き残ったアリたちが1匹ずつ巣に運んで綺麗に並べるのだ。一体どうやって撮影したのか分からないほど鮮明に撮られていて、これも実に見事な映像だった。

 このようにこの映画は蟻の生態をこれでもか!というほど鮮明に、そして緻密に捉えている。ここまでくると、もはや主役は人間よりも蟻の方にあるのではないかとさえ思えてしまう。

 逆に言うと、人間サイドのドラマは平板である。クライマックスの戦いまでは必要以上に盛り上げないので、人によっては退屈するかもしれない。個人的にはこうした淡々とした作りに逆に怖さを感じるが、確かにエンタテインメント性は薄い。

 また、後半あたりから科学的根拠に乏しい荒唐無稽な出来事が徐々に起こってくるので、そこも興が削がれた。例えば、蟻を掃討したガスが一体どんな物質だったのか、その説明は一切ない。また、ガスの攻撃にすぐさま蟻が順応してしまうのも、何だかご都合主義に思えてしまった。こうした突っ込み所が後半から徐々に増えてくる。

 ただ、最初に言ったように、ここまで見事な撮影が堪能できるという意味では、稀に見る”映像作品”であるし、且つ一切の娯楽性を削ぎ落とした語り口には見る者を強く引き込む求心力もある。好き嫌いは分かれると思うが、映像を見るだけでも一見の価値がある作品だと思う。
[ 2014/08/25 01:03 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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