D・アルジェントの監督2作目。
「わたしは目撃者」(1970伊)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 遺伝子研究所で殺人事件が発生する。研究所の向かいに住む盲目の元新聞記者アルノは暗闇の中で事件の音を聞きつけた。警察が来て捜査が開始されるが、幸い研究所からは何も盗まれていなかった。しかし、その直後に研究者の一人が電車に轢かれて死亡してしまう。更に、その現場を偶然カメラに収めた記者も謎の死を遂げた。彼の同僚カルロはアルノと共に犯人の捜査を開始する。
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(レビュー) ジャーナリストが遺伝子実験を巡る陰謀に巻き込まれていくサスペンス映画。イタリアのホラー作家D・アルジェントの監督2作目の作品である。
すでに処女作
「歓びの毒牙(きば)」(1969伊西独)から独特のタッチは開眼していたが、それをもう1ステップ突き進めたのが今作である。
まず、なんと言っても犯人の主観で捉えた映像演出が素晴らしい。犯行に至るまでの経緯を1カメで捉えながら臨場感あふれるスリルを作り出している。
また、犯行の途中に度々大写しになる犯人の瞳のクローズアップも印象に残った。残忍な殺しの場面にサブリミナル的に挟まり、これが良いアクセントになっている。但し、このクローズアップは犯人の瞳と盲目の老紳士アルノの瞳。2種類登場してくるので、ここは犯人の物に統一してくれないと見ていて混乱してしまう。
殺害方法も色々と工夫が凝らされていて恐ろしく感じられた。特に、絞殺シーンは延々と被害者のクローズアップが続くというえげつなさである。後のアルジェント作品に比べれば流血などもなくショック度は控えめだが、この生々しさはかえって残酷さを際立たせていると思う。
クライマックスの犯人追跡シーンも面白く見れた。ダイナミックなロケーションを活かした映像が素晴らしい。また、犯人が辿る顛末についてもよく考えられていると思った。
難点を言えば、人物の立ち回りをもう少し整理してい欲しかったか‥。研究所の関係者が複数登場してくるが、このあたりはもっと饒舌に紹介してくれないと少し分かりづらい。
それと、アルノの盲目という設定を活かすような展開が、もうひと押し欲しかった。確かに、墓地のシーンのミスリードは、彼の盲目という設定を活かしたナイス演出である。しかし、ここ以外にこの設定がサスペンスに絡んでくる場面は無い。出来ることなら、クライマックスにもう1クッション、このハンデを使った盛り上げが欲しい所である。割とアッサリとした結末になっているので、どうしても見終わった後に食い足りない。
音楽はE・モリコーネ。こちらはスリリングなスコアでシーンに上手く抑揚をつけていた。抒情的なメロディ主体の音楽からジャジーな音楽、神経を逆なでするような前衛的な音楽等。これはサントラが欲しくなってくる。