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ももへの手紙

牧歌的な雰囲気で描かれるファンタジーアニメ。
ももへの手紙 [Blu-ray]ももへの手紙 [Blu-ray]
(2012/10/26)
美山加恋、優香 他

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「ももへの手紙」(2012日)星3
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ)
 小学6年生のももは、父の死をきっかけに母の実家がある瀬戸内海の島に引越しする。しかし、ももは人見知りな性格なため地元の子供たちと知り合っても中々一緒に遊べないでいた。そんなある日、屋根裏部屋で1冊の古い書物を見つける。そこには妖怪の絵が描かれていた。祖父の話によれば、それは古い先祖が遺した物らしい。母は朝早くから夜遅くまで仕事。夏休みで学校も休みである。日々、退屈を持て余していたももの前に、3人の妖怪イワ、カワ、マメが現れる。

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(レビュー)
 妖怪と少女の交流をハートウォーミングに描いたファンタジー・アニメ。

 映画のタイトル「ももへの手紙」が示す意味。それは序盤の父の書きかけの手紙と、ラストの手紙によって感動的に提示されている。正直、この仕掛けには”してやられた”という感じがした。伏線も見事に回収されており、ももと天国の父の奇跡の交流に涙させられた。泣ける作品であるが、変な嫌らしさは余りない。淡々とする中で感動を謳い上げた所に好感が持てた。

 加えて、映像のクオリティもかなり高い。
 まず、何と言っても美術が素晴らしい。物語の舞台となるのは瀬戸内海をのぞむ小さな港町である。周囲には青い空と緑の山々が広がり、この牧歌的な佇まいには癒される。

 アニメーションを制作しているのは「攻殻機動隊」シリーズ等でも有名なProduction I.G.である。正直、こうした朴訥としたアニメを制作するとは意外だった。しかも、そこで繰り広げられるのは等身大の”生”の人々の物語である。これまではSF、サイバーパンクな世界観を得意としてきたプロダクションだけに、良い意味で期待を裏切ってくれたという感じである。

 ちなみに、細かい作画面で言えば、序盤の父の笑った表情が抜群に良かった。大人が思春期の子供に媚を売る感じ。それがよく出ていた。それを見たももの失望も当然という気がした。

 監督は沖浦啓之。彼は先述のProduction I.G.の中で活動してきた作家である。前監督作「人狼 JIN-ROH」(1999日)は未見であるが、押井守監督の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(1995日)や「イノセンス」(2004日)ではキャラクターデザインや作画監督を務めていた。それらを見る限り、ハードな世界観を持った作家のように思った。ところが、これも意外で、今回は所々にコミカルな演出を効かせながら、全体的にハートウォーミングに仕上げられている。これまで見てきた作品とガラリと作風を変えてきた所に、新境地に対する意気込みが感じられる。

 特に、妖怪3人組の登場の仕方については、沖浦監督の上手さが光っていた。彼らは外見からして写実的な美術背景から、かけ離れた造形となっている。これを普通に描くとなると周囲から浮いてしまいかねない。その下手を打たないためにも沖浦監督は周到に演出を積み重ねながら、ももの前に彼らを登場させている。これがアッサリと見えてしまったら嘘くさくなるし、逆に必要以上に伸ばしてしまうとホラー的になってしまう。ももと妖怪の接触を早すぎず遅すぎず、丁度いいタイミングで描いた所に感心させられた。少しでも彼らの存在にリアリティを与えんとする苦心が見て取れる。

 ただ、妖怪の存在については、少し引っかかりを覚える部分もあった。通常、彼らは人間には見えない存在である。しかし、1箇所だけ、近所の小さな女の子が彼らの姿に気付いているような演出があった。もも以外の子にも見えるのだろうか?だとするのなら、その説明は要したかった。

 また、演出面で気になる点もあった。母親が倒れて、ももが奔走するというクライマックスの展開。今作の一番の見せ場である。しかし、ここに余り危機感が感じられない。ももの周囲の人間たちが余り焦ってないというのもあるのだが、そもそも、ももの使命感が安易に写ってしまった。ここは溜めに溜めて、ももの葛藤を深く掘り下げる必要があったのではないだろうか。ボルテージをゆっくりと盛り上げることで、クライマックスはもっとドラマチックに出来たように思う。

 尚、キャストは夫々好演していると思った。いわゆるタレントなどは使わず、プロの声優陣で固められているので安心して聞けた。
[ 2014/10/15 01:02 ] ジャンルアニメ | TB(0) | CM(0)

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