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夏の夜は三たび微笑む

I・ベルイマンのコメディは今回初めて見た。
やはり巨匠と呼ばれるだけあって作りが丁寧だ。
夏の夜は三たび微笑む夏の夜は三たび微笑む
(2002/07/25)
グンナル・ビョーンストランド、ウッラ・ヤーコブソン 他

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「夏の夜は三たび微笑む」(1955スウェーデン)星3
ジャンルコメディ・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 20世紀初頭のスウェーデン。弁護士フレードリックは若い娘アンと結婚している。年が離れすぎていることもあり二人は未だに初夜を迎えていない。不満を募らせるアンに義息子ヘンリックが密かな想いを寄せた。一方のフレードリックは、アンを放ったらかしにして人気舞台女優デジレとの情事に熱を上げていた。相手のデジレには別にマルコム伯爵というパトロンがいる。二人はデジレの部屋でかち合い一触即発の事態に発展するが、彼女の仲裁でどうにかその場は収まった。しかし、問題は翌日に持ち越される。デジレの母がフレードリック家とマルコム家を晩餐会に招待したのだ。
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(レビュー)
 実は、これまでベルイマンの作品は重厚でシリアスなものしか見たことが無かった。本作は氏にしては珍しい喜劇である。テンポの良い話運び、手際の良いキャラ立てなど、レベルの高さは相変わらずで、さすがは巨匠の撮った喜劇である。

 また、物語の底辺には人間の嫉妬や虚栄といった陰の部分がしっかりと描きこまれていて、この辺りもいかにもベルイマンらしく見応えがあった。決して正面切って描いているわけではないが、上手く”笑い”のオブラートに包み込んでいるあたりが心憎い。

 この映画で見事なのは結末だと思う。人間の嫌らしい悪心をシニカルな笑いへと昇華していくあたりが実に見事である。不謹慎ながら爽快感すらおぼえてしまった。
 尚、ここで女中ベトラを持ってくるのは上手い。考えてみれば、ドロドロとした愛憎劇にあって、彼女にまつわる恋愛だけが朴訥とした温もりに満ちたものである。喜劇として落とすなら、やはり彼女を持ってくるしかなかろう。微笑ましいエンディングだった。

 ちなみに、コメディとは言っても決して大笑いできるようなタイプの作品ではない。どちらかというとクスクス笑うタイプの作品である。

 そんな中、一番笑ったのが、デジレの部屋にマルコム伯爵が泥まみれの姿で入ってくるシーンだった。
 この前にフレードリックが水溜りに尻餅をつくシーンがある。つまり、伏線とオチが見事な合致を見せ笑えてしまうのだ。このあたりの計算されつくされた演出には感心させられる。
 そして、このシーンはマルコム伯爵のキャラクターを紹介する上でも実に手際の良い演出に思えた。言わば、彼はフレードリックの恋敵=悪役なわけだが、この滑稽な姿から「あぁ、この男もドジで憎めない一面を持っているんだなぁ」と一発で思わせてしまう。単に悪役といっても妙に親近感が涌いてくる。これぞ人物造形の妙味だろう。
[ 2008/03/26 15:31 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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