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異母兄弟

三國連太郎の老け役振りが見所。
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(2013/08/24)
三國連太郎、田中絹代 他

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「異母兄弟」(1957日)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 利江は陸軍大尉・鬼頭範太郎の家で女中として働いていた。範太郎は傲慢な男で、ある晩、利江は彼に手籠めにされてしまう。そして、彼女は男児・良利を出産した。良利は範太郎に認知してもらえないまま、母と一緒にこの屋敷で暮らすことになった。その数年後、利江は二人目の子供・智秀を出産する。更にそれから10年後、範太郎の実の息子たちは父に可愛がられながら立派に陸軍学校に進学した。その一方で、良利と智秀は学校にも行かせてもらえず、毎日範太郎に剣道の稽古でしごかれた。2人は徐々に範太郎に憎しみを募らせていくようになる。

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(レビュー)
 戦時中の陸軍一家に奉公する母子の辛く悲しい物語。

 実に隠滅としたドラマである。しかし、人間の残酷さ、反戦メッセージが重厚にしたためられていて見応えがあった。演者の好演も作品のクオリティを根底から支えている。

 特に、範太郎を演じた三國連太郎の老け役振りは堂に入ってる。撮影当時34歳だった彼は、この役作りのために上下の歯を10本も抜いたそうである。そのかいあって、この造形のリアルさといったら見事というほかない。利江と彼女の子供たちに酷い仕打ちをする憎々しい演技も絶品だった。

 一方、利江を演じた田中絹代もまずまずの好演を見せている。三國に比べると造形面で若干、年齢の推移に甘さを感じたがそこは演技力でカバーしている。尚、彼女はこの後に木下恵介監督の「楢山節考」(1958日)で、やはり抜歯して老け役に挑んだ。今回の三國の役作りに触発されたというわけではないだろうが、このストイックな俳優魂は大したものである。

 物語は約20年に渡る大河ドラマとなっている。展開が流麗に進むので飽きなく見れた。省略の仕方も上手い。例えば、範太郎の息子たちが戦争でどうなったのかは具体的に描かれておらず、そこは写真を使って説明されている。言葉でクドクドと説明するよりも直感的に分からせるという点で見事な演出だと思った。他にも、サブキャラを上手く立ち回らせることで主要人物たちの立場、感情を説明したり、シナリオ自体はよく練られていると思った。

 ただ、演出は場面によって過剰な所があり余り感心できない。役者の演技が剥き出しになる場面が多々あり、全体的に苦しい、悲しいの”押し売り”に写ってしまった。また、時折、照明が作為的になるのも不自然で今一つである。

 更に音楽も作品に合っているとは言い難い。基本的に電子オルガンによる演奏が続くのだが、これが場面によっては大仰で興が削がれてしまう。音楽監督は芥川也寸志。彼が音楽を担当した作品は何本か見ているが、今回はどうも実験色が強すぎる気がした。
 尚、彼は文豪・芥川龍之介の三男である。音楽の才能に恵まれた彼は数多くの映画音楽を手掛けているが、当時日本では電子オルガンが出始めたばかりである。おそらくだが、今回それを取り入れてみたのだろう。しかし、これが完全に裏目に出てしまった。
[ 2014/10/27 01:23 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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