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野いちご

野いちご野いちご
(2001/07/25)
ヴィクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン 他

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「野いちご」(1957スウェーデン)星4
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 老医師イーサクは名誉博士号を授賞することになり、息子の嫁マリアンヌと一緒に会場へ車を走らせた。途中で、少年時代を過ごした邸宅を訪ねる。在りし日の情景に思いをめぐらすイーサク。それは初恋の人サーラに失恋するという苦い思い出だった。そこでヒッチハイクをする3人の若者達と出会う。偶然にもその中の一人はサーラという名の少女だった。こうして3人を乗せて一路会場へと向かった。すると、今度は途中であやうく追突事故を起こしそうになる。相手の車は横転。仕方なく乗っていた中年夫婦を同乗さてやせる。しかし、中年夫婦は人目もはばからず口喧嘩ばかり。夫と喧嘩したばかりのマリアンヌにはそれが耐えられなかった。中年夫婦を降ろして一向は再び会場へと向かう。
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(レビュー)
 老人の邂逅を幻想と現実を交えて描いた作品。
 監督・脚本はI・ベルイマン。彼はよく人間の「孤独」をモチーフに映画を撮っているが、本作は正にその一点を突いたような作品である。

 物語はイーサクにとっての現実と幻想のカットバックで構成されている。二つの世界の取り持つのが同じ名前を持つサーラという二人の少女だ。彼女等によってこの世の朧(おぼろ)、つまりイーサクの孤独が表現される。一種異様な奇妙な世界観だが、サーラというキーマンを利用しながら巧みに作り上げられているため余り不自然さは感じなかった。

 この映画の妙味は「死」の描き方にあると思う。
 シュルレアリスム的な序盤の悪夢に象徴されるように「死」=「恐怖」という捉え方に始まり、物語の後半に入ってくると「死」=「安堵」に推移していく。極めてロマンチズムな方向転換だが、「死」に対するイーサクのこの心理推移は作品そのものを普遍的高みへと押し上げているような気がする。「死」は恐れるべきものではない。残された「生」を幸福に生きるために必要なものなのだ‥というポジティヴ思考に変わっていくのだ。これは人生を生きるうえで、大切な考え方と言えるのではないだろうか。

 人は死を前にして誰しも人生に多少の後悔を残すものであろう。イーサクは他者との関係性に心残りがあった。初恋の相手、息子、義娘、家政婦等々。彼等に対して余りにも冷淡だったと‥。映画のラストで彼は過去を省みて、目の前に迫る「死」に向かいきっとこう考えたのではないだろうか。
 余命がどれほど残されているか分からないが、もし取り戻すことが出来るのなら、思い出にあったあの美しい田園風景のように、そんな温もりに満ちた人生を歩みたい‥と。

 「死」を認め「生」を実感する。これこそが生きる原動力なのではないだろうか。残念ながら多くの人はイーサクのように老いてようやくそれに気付くものだが、常にこうした未来を生きる原動力は持っていたいものである。
 人生に絶望と孤独を感じている人には強く勧めたい作品である。
[ 2008/03/28 18:13 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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