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50/50 フィフティ・フィフティ

癌におかされた青年の悲喜こもごもを軽妙に綴った作品。
50/50 フィフティ・フィフティ [DVD]50/50 フィフティ・フィフティ [DVD]
(2012/07/03)
ジョセフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローゲン 他

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「50/50 フィフティ・フィフティ」(2011米)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 ラジオ局に務める青年アダムは、ある日医師から癌を宣告される。5年後の生存率が50%いう難病だった。同僚のカイルや同棲中の恋人レイチェル、離れて暮らす両親に支えられながら彼は治療を始めた。そして、同じ病気を患う老人たちと仲良くなったり、新米セラピスト・キャサリンに色々と相談にのってもらいながら、闘病生活は順調に続いて行った。しかし、治療は想像以上に厳しく、次第にアダムは精神的に疲弊していく。

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(レビュー)
 実際にあったドラマを、今作で助演を務めたセス・ローゲンが製作を兼ねて映画化した作品。脚本家は自分の実体験を元に本作のシナリオを書いたということである。

 いわゆる難病物なのだが、決してお涙頂戴物になっていない所が良いと思った。また、本作は単に癌を克服するだけのドラマではなく、一人の青年の心の成長を描いたドラマにもなっている。そこに普遍性が感じられた。

 主人公のアダムはラジオ局で番組の制作をしている真面目な青年である。彼の周囲には親友で同僚のカイル、同棲中の恋人レイチェルといった人間がいて、彼らに支えられながらアダムはそれなりに満足した生活を送っている。

 ここで面白いと思ったのは、カイルのキャラクターである。彼はアダムと正反対のイケイケなナンパ男で、生真面目なアダムとの対比が面白い。
 また、恋人レイチェルのキャラクターも、アダムとの関係性に於いては絶妙だと思った。彼女は画家を夢見ている女性で、いわゆるアーティスティックな一面を持っている。これが視聴率優先のラジオ番組を製作しているアダムには無い資質となっている。しかも、アダムはどちらかと言うと受け身な性格であるが、反対に彼女は割と行動派である。この対比も面白かった。

 この映画が優れている点は正にここで、主役に平凡な男を据えて、周囲にアクの強いキャラクターを揃えたことである。病魔に侵されたアダムが彼らとの交流を通して、本当の自分を見つけていく、自分の殻を破っていくというドラマ構造が見事に形成されているのだ。ある意味で、この映画は自分探しの旅のドラマ‥とも言える。

 クライマックスでは、何事に対しても逃げてきたアダムが、ついに逃げも隠れも出来ない状況に追い込まれてしまう。ここで初めて彼は泣き叫ぶ。カイルやレイチェルの影に隠れて生きてきた自分を捨てて、ついに本当の自分を思いっきり曝け出すのだ。この感情の爆発には胸が熱くなった。

 尚、アダムは両親とも不仲である。母親は過保護で、父親はアルツハイマー病を患っていて、彼は実家に寄りつこうとしない。しかし、癌を宣告されて初めて彼は両親に正面から向き合おうとする。死に際して家族の重要性を知っていくのだ。これも自分を見つめ直す行為と言えよう。

 そして迎えるラスト。映画はアダムと女性セラピスト・キャサリンの会話で終わる。ここは興味深かった。彼女がアダムに、今後どうするの?と尋ねても、アダムはただ微笑むだけである。そのまま映画は終わってしまう‥。観客に答えを託した結末が深い余韻を引く。
 自分はこのラストを見て、あぁ、アダムは新しい人生を選択したんだな‥と思った。見る人によって捉え方は夫々になるかもしれないが、自分にはアダムの”新たな出発”のように感じられた。

 キャストでは、アダム役を演じたJ・ゴードン=レヴィットの熱演が中々良かった。苦しい闘病演技を上手く表現していた。
 ただ、個人的には悲劇一辺倒になりかねない今作に絶妙なユーモアを持ち込んだカイル役のセス・ローゲンの方を強く買いたい。

 カイルは非常に陽気な男で、シリアスなアダムとは性格は正反対である。他人の考えを気にしない独善的な部分もあるが、心根は優しい男でアダムのことを本気で心配する。病気で落ち込んでいる彼に、良い気晴らしになるからと言って色々とおせっかいをする。それによってアダムの私生活は乱されることもあるのだが、二人の友情は絶対に壊れることはない。カイルはアダムにとって唯一の親友。何でも言い合える、真の友情が二人の間を取り持っているのである。これをセス・ローゲンが独特の愛嬌で妙演していて印象に残った。
[ 2014/11/18 01:09 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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