fc2ブログ










チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~

ちょっとファンタジックな人間ドラマ。
チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~ [DVD]チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~ [DVD]
(2013/05/02)
マチュー・アマルリック、マリア・デ・メディロス 他

商品詳細を見る

「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~」(2011仏独ベルギー)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルファンタジー・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 天才的なバイオリニスト・アリは、妻に大切なバイオリンを壊されたことで自殺を決意する。それから8日間、彼は部屋に引きこもって過去を回想した。愛する娘との思い出、実弟との確執、息子や妻との関係、悲しくも切ない初恋の思い出‥等々。そして、8日目に彼はベッドで最後の夢を見ながら自らの命を絶とうとする。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 あるバイオリニストの最期の8日間を、彼の回想を交えて描いた人間ドラマ。

 物語は主人公アリの視点で、現在と過去を巧みに往来しながら展開されている。
 一日目は愛する娘とのドラマが回想される。娘は幼い頃から母の束縛を受けて育った。その反動で彼女は成長すると不良娘になり殺伐とした人生を送るようになる。何とも悲痛なドラマであるが、それがアリの視点によって温もり満ちた思い出として綴られる。
 二日目は実弟との確執が回想される。アリと弟は同じ兄弟でありながら性格も素質も完全に違っていた。弟は勉強が出来たが、アリは落ちこぼれで何をやってもダメで、そのせいでアリは劣等感を抱いた大人に成長してしまう。アリにとって最も辛い思春期時代が、その黒歴史と共に振り返られていく。
 更に、三日目にはアリと息子の関係が、四日目は妻との関係、五日目は初恋のドラマ‥といった具合に、これまでの半生がアリの視点で回想されていく。そして、その中から彼が自殺しようとした理由も判明してくる。

 原作・監督は自伝的コミック「ベルセポリス」(2007仏)の映画化で世界的に注目を浴びたイラン出身の女流監督マルジャン・サトラピ。「ベルセポリス」は未見だが、彼女の監督しての才能は今作を見て確かなものと感じ入った。

 まずは何と言っても本作に通底する様式美が見事である。アニメーションやミニチュアによる特撮、ポップな画面設計、ファンタジーな美観等、映像の作り込みが極めて独特である。元々コミック・ライターだったことを考えると、このあたりの映像センスには彼女の才能が如何なく発揮されているのだろう。実に面白い映像だった。

 特に、アリと息子の関係を描いたエピソードは一番画面が凝っていて面白く見れた。息子はアメリカへ渡って結婚をして幸せな家庭を築くのだが、その家庭風景が完全にアメリカのホームドラマのようである。ポップな色彩で塗り固められたセット、古いホームドラマには付き物の外野の笑い声等、完全にパロディを狙ったものである。また、ピザの食べ過ぎで妊娠に気づかなかったという馬鹿げた話も、ほとんどアメリカン・ジョークのような面白さがある。カリカチュアされた映像、ギャグは今作随一だった。

 ただし、その一方で、映画全体の構成を考えると少々疑問を禁じ得ない。
 8日間に渡ってアリと周囲の関係が紹介されるというストーリー構成は、ともするとエピソードを単に横並びに並べただけで散漫な印象になってしまう。一つ一つは面白く見れるのだが、いざそれらがクライマックスを盛り上げる起爆剤になるかと言うとそうはならない。

 本作のメインのエピソードはアリの初恋のエピソードである。これをもっと深く描けば更にメッセージの強い映画になったのではないだろうか。実際、このエピソード自体はクラシカルなメロドラマとして、それなりに感動できるように作られている。重要なアイテムの置き時計の使い方も中々味があって良かった。一つのエピソードとして見れば決して悪くはない。それだけに、ここにサブ・エピソードを効果的に絡ませたかった所である。
[ 2014/11/24 23:35 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1342-79590430