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県警対組織暴力

引き続き菅原文太さんを追悼。ヤクザと刑事が織りなす複雑な友情ドラマが熱い!
県警対組織暴力 [DVD]県警対組織暴力 [DVD]
(2009/06/01)
菅原文太、梅宮辰夫 他

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「県警対組織暴力」(1975日)star4.gif
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 昭和32年、倉敷。大原組に内紛が勃発し、川手、広谷の若頭が対立を深めていた。それから6年後、広谷と繋がりがある倉敷署の捜査二課・久能刑事は事態の収拾に動き出した。その頃、川出のバックには政界に進出した友安が付いていた。彼のおかげで川出は事業を拡張し、その勢いは増すばかりであった。久能はこの蜜月を掴んで川出を潰そうとするのだが‥。

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(レビュー)
 ヤクザと刑事の友情をハードに綴ったアクション映画。

 暴力団組織の内紛から始まる物語は、警察との戦いを交えながらハイテンションに綴られている。いわゆるこれも、「仁義なき戦い」シリーズから始まる実録物ヤクザ路線の系譜に入る作品である。
 しかし、本作は途中までは確かにヤクザの抗争を描く実録物路線の映画になっているが、後半から全然違う話になっていく。倉敷警察署にエリート警部補・海田が赴任することで、今度は警察内部の混乱と対立を描くドラマに切り替わっていくのだ。正直、前半と後半ではまったく異なるドラマであり、見ている最中は少々戸惑いを覚えた。おそらく、映画の本文となるのは後半の警察組織のゴタゴタであろう。そこを最初から突き詰めていけば、もっとテーマは明確になったように思う。

 実際、後半から登場する海田のキャラクターが中々に良く、野卑な主人公・久能との戦い。つまり”エリート刑事”対”現場主義の刑事”の戦いは大変面白く見れた。

 印象的だったのは久能の葛藤である。劇中でもセリフで語られているが、現場の叩き上げである彼にとって出世は夢のまた夢。海田のようなエリートでない限り、久能のような刑事は、ほとんどが組織の末端でそのキャリアを終えていく。このあたりは「踊る大捜査線」における織田裕二と柳葉敏郎の関係によく似ている。
 ならばと、久能はヤクザの広谷と繋がりながら情報を交換したり、時には甘い汁にあずかったりしながら捜査を渡り歩いていく。そうすることで彼は現場を監視し、己の刑事としてのアイデンティティを確立していくのだ。ところが、清廉潔白を信条としたエリートの海田には久能のやり方が許せない。警察官の風上に置けないと、ヤクザとの繋がりを徹底的に禁止し、真っ向から組織の撲滅に邁進していくのだ。こうして久能と海田は対立していくようになる。

 更に、これによって久能と広谷との友情にも亀裂が入ってしまう。刑事とヤクザ。立場は違えど、暴力の社会に生きる者同士、根底の部分では固い絆で結ばれていた二人の関係は、海田の強権的な捜査方針によって崩れてしまうのだ。その喪失感を描くクライマックス・シーンは実に印象深い。久能の表情は男泣き必至なシーンとなっている。

 また、久能と広谷の出会いを描く回想シーンも印象に残った。罪を犯して逃げ込んできた広谷に茶漬けを振舞う久能。それを泣きながら食べ、食べ終わると茶碗を洗う広谷。ここはモノクロの回想シーンで渋い。二人の友情がはっきりと伝わってくる良いシーンである。
 ちなみに、妻に捨てられて孤独の身となった久能に、女を世話する広谷の優しも味わい深かった。

 脚本は笠原和夫。長年この手のヤクザ映画を手掛けてきた、いわゆる手練れのライターである。もはや勝手知ったるといった塩梅であるが、前半で描かれた内部抗争のドラマが結局おざなりになってしまったのはいただけなかった。しかし、後半の友情、裏切り、喪失のドラマは実に痺れるものとなっている。アウトローの刹那的な世界を描くことにかけては卓越した手腕を発揮している。

 監督は深作欣二。こちらもこの手の映画はお手の物と言った感じだろう。
 多くの客が踊るナイトクラブで、一般人が買い物をする商店街で、警察署の目の前で。至る所で繰り広げられる抗争シーンは、良い意味でエンタテインメントに特化している。ここまでオープンに殺し合いをされると潔い。悲壮感を一切抜きにしたバイオレンスシーンの数々に深作らしい作家性が伺えた。

 その一方で、ラストは一転、アメリカン・ニューシネマよろしく、ドライで現実主義的な幕引きで終幕する。エリート刑事・海田と現場主義の刑事・久能。二人が辿る運命の差が残酷且つ皮肉的に表現されている。このドライさもまた「仁義なき戦い」シリーズでコンビを組んできた深作&笠原ならではの味だろう。

 キャストも夫々に個性的で良かった。
 久能役の菅原文太、広谷役の松方弘樹、共にハマっている。また、海田役の梅宮辰夫は少し意外な役回りだったが、そこに新味を覚えた。
 他に「仁義なき戦い」シリーズではお馴染みの面々が続々と登場してくる。その中でもの川出の子分を演じた川谷拓三が一際印象に残る演技を披露している。警察署の便所で妻にセックスをせがむ場面の惨めさが良かった。
[ 2014/12/05 01:10 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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