戦うおやじ=L・ニーソン。ここに誕生!
「96時間」(2008仏)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 元CIA工作員のブライアンは離婚して今は孤独な暮らしを送っている。しかし、今でも妻に引き取られた娘キムのことを人一倍愛していた。そのキムが旅行中に誘拐されてしまう。ブライアンは娘を取り戻すために、彼女が向ったパリへと急行する。
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(レビュー) 元工作員が誘拐された娘を追って闇の組織と戦っていくハードなアクション作品。
製作・共同脚本はL・ベッソン。言わずと知れた名匠で、これまでにもアメリカとヨーロッパを股にかけながら数々の話題作を撮り上げてきた。ただ、最近はプロデュース業にも積極的に進出しており、今作も彼が設立した製作会社ヨーロッパ・コープの元で作られた作品である。この会社は活きの良い若手監督を起用しながら様々なアクション作品を輩出している。
そんなベッソン印の本作。結論から言うと、アクション映画としては中々よく出来ていると思った。ブライアンを取り巻く環境、キムの父に対する感情、事件のからくりといったものは極力簡略化されており、そこにやや食い足りなさを覚えたが、アクションを活かした作りが徹底されている所は潔い。上映時間も90分程度と見やすく、お手軽感があるのも嬉しい。
また、監督ピエール・モレルのアクション演出も、今時のスピード感に溢れた演出で良かった。元々彼はカメラマン出身で、劇映画のデビュー作は「トランスポーター」(2002仏)の撮影監督である。「トランスポーター」はJ・ステイサムがプロの運び屋を演じたアクション映画で、迫力のあるカーチェイス・シーンが大きな見所だった。その時の経験があるからだろう。今回のクライマックスのカー・アクションも手に汗握るシーンとなっている。
ただ、スタイリッシュさを狙う余り、不用意な映像処理も散見される。キムが誘拐されたホテルでブライアンが見る幻視には少々戸惑いを覚えた。おそらく犯行現場から事件の状況を再現しているつもりなのだろうが、見ようによってはまるでブライアンに超能力でも備わっているかのように見えてしまった。ここは演出をもう少し抑え目にして欲しかった。
ブライアンを演じるのはL・ニーソン。これまでは文芸作品やヒューマン系のドラマで活躍してきたイメージがあるが、中々どうして、アクションもそつなくこなしている。
本作はアメリカや本国フランスでスマッシュ・ヒットを飛ばしシリーズ化された。そういう意味では、M・デイモンにとっての「ジェイソン・ボーン」シリーズのように、この「96時間」シリーズはニーソンにアクション・スターとして道を切り開いたシリーズとなった。これを見たら”戦うオヤジ”というイメージでしか彼を見れなくなってしまうかもしれない。
尚、来年1月には第3弾にして最終章の公開が予定されている。