ジージャーの活躍に尽きる映画!
「チョコレート・ファイター」(2008タイ)
ジャンルアクション
(あらすじ) 日本人ヤクザ・マサシとタイのヤクザ、ナンバー8の愛人ジンの間に、赤ん坊が生まれる。彼女ゼンは先天的な障害があったが、その代わりに人並み外れた高い身体能力を持っていた。数年後、成長したゼンは、その特徴を活かして隣近所の少年ムンと組んで大道芸を始めて荒稼ぎをしていた。そんなある日、ジンが白血病で倒れてしまう。2人は治療費を工面するために奔走するのだが‥。
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(レビュー) ガチンコの激しい戦いで大いに話題を呼んだ「マッハ!」(2003タイ)のスタッフが、それに負けず劣らずのテンションで綴ったアクション・ムービー。
本作は、何と言ってもゼンを演じたジージャーの身体を張ったアクション。これに尽きる作品だと思う。あどけない顔立ち、小さな体からは想像もつかないほどの激しい格闘を披露し、これには圧倒される。ちなみに、彼女はこの撮影のために4年間基礎トレーニングを積み、撮影には2年間もかかったそうである。聞いただけでも気の遠くなる年月だが、その努力は画面から十二分に伝わってきた。
例えば、クライマックスの屋上のシーン。ここでは狭い所に入り込んだジージャーが腰をかがめながら敵と激しい格闘を演じている。小さな体を活かした彼女にしかできないアクション・シーンで、あの窮屈な場所であれだけの素早い動きが出来るとは大したものである。
また、ビルの縁を舞台にした最後のアクションも素晴らしかった。狭い足幅なので一歩間違えれば地面に真っ逆さまである。それをジージャーは、いとも簡単に(実際にはそうではないと思うが)やっている。
一部でワイヤーも使っているようだが、基本的にここに出てくる格闘シーンは、ほとんどが本物志向である。「マッハ!」の時にも思ったが、CGやトリックでは出せない”生”の迫力。それが今回も堪能できた。
一方、ストーリーはシンプル過ぎるきらいがあるが、アクションに特化した作りであることを考えればまずまずと言った所である。
まず、ゼンが自閉症という設定なので、一体どうやって格闘術を習得するのだろうか?と疑問に思った。ところが、彼女には研ぎ澄まされた五感と驚異的な身体能力が備わっており、見たものを全てを習得できるという特殊技能がある。かつてなら師匠の下で厳しいトレーニングを積んで‥というのが定番だったが、この映画はそんな面倒臭いことはしない。ビデオやテレビゲームを見ただけで習得してしまうのだ。これが映像世代か‥という驚きと共に、いかにも現代的な設定で面白い。
ただ、欲を言えば、彼女が好きなチョコレートの使い方、阿部寛が演じる日本人ヤクザ・マサシの立ち回り方は、もっと工夫して欲しかった。チョコレートは映画のタイトルにもなっている。見る方としては、どうしてもそこに意味を求めてしまいたくなる。
また、ゼンが見る悪夢をアニメーションで表現しているが、これは奇をてらいすぎて違和感を持ってしまった。
尚、本作にはナンバー8の用心棒として、ジャージ姿&眼鏡の格闘家が登場してくる。これがゼンと対を成すかのような出で立ち、自閉症気味という設定で中々面白かった。とはいえ、本作にはゼンと対等に渡りあえるような、言わば”宿敵”が登場してこない。唯一あるとすれば、このメガネ君なのだが、意外にもアッサリ負けてしまったので肩透かしを食らった。ゼンを危機に追い込むような絶対的な”宿敵”。それが無かったのは残念である。唯一この映画で欠けている物があるとすればそこで、そうすればクライマックスは更に盛り上がっただろう。