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クリスマス・ストーリー

家族の在り方も多種多様。
クリスマス・ストーリー [DVD]クリスマス・ストーリー [DVD]
(2011/11/26)
カトリーヌ・ドヌーヴ

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「クリスマス・ストーリー」(2008仏)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 フランス北部の閑静な住宅街。そこに初老の夫婦ジュノンとアベルが仲睦まじく暮らしていた。ある日、ジュノンが白血病と診断される。治療するためには骨髄移植をするしかなかった。早速、家族の中に血液の適合者がいないか検査が始まった。そして、長女エリザベートの息子ポールが適合すると診断された。複雑な思いに駆られるエリザベート。クリスマスの日、エリザベート、彼女と因縁の関係にある二男アンリ、二人の子供に恵まれ幸せな家庭を築いている三男イヴァン等、家族一同がジュノンの家に集まる。

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(レビュー)
 母の病気をきっかけにした家族の愛憎物語。

 母ジュノンの骨髄移植を巡る話が主たるドラマだが、本作にはこれ以外にも様々な問題が出てくる。設定だけ聞くと、いわゆる難病物にはお約束の感動系と思われがちだが、意外にヘビーな問題も登場してきて中々歯ごたえのある作品だった。見終わった後に家族の在り方について色々と考えさせられた。安易にハッピーエンドに持って行かなかった所も良い。
 例えば、長女エリザベートと二男アンリの反目は、普通の映画であれば最後に解決されて終わるだろう。しかし、本作では最後まで未解決のまま終わってしまう。これだと確かにカタルシスはない。しかし、現実をきちんと見据えた所に作り手側の誠意が感じられる。現実とはそんなに甘いものじゃないんだよ‥という製作サイドの主張。それを臆せずきちんと提示した所を評価したい。

 先述したように、物語はジュノンの病を中心にしながら展開されていく。そこで物語の中心を担うのは二男アンリである。彼は事業の失敗で実家の財産に多大な損失を与え、それが原因で長女エリザベートに絶縁されてしまった。言ってしまえば典型的な甲斐性無しなのだが、そんな彼が母の病気を見舞うために久しぶりに帰ってくる。エリザベートは当然面白くない。家族の輪にピリピリした緊張感が流れ、これが非常に面白く見れた。

 やがて、彼はジュノンの骨髄移植の適合者であると診断される。家族の中に適合者はもう一人いて、それはエリザベートの息子ポールである。果たしてどちらがジュノンに骨髄移植をするのか?そこがこのドラマのクライマックスとなる。

 これはエリザベートにとっては非常に悩ましい問題である。愛する我が子はなるべき犠牲にしたくない。けれども、犬猿の仲であるアンリにも恩を売りたくない。この葛藤が後半から浮かび上がってくる。
 一方のアンリは今まで自分をつまはじきにしてきたエリザベートと和解しようという気はさらさらない。ただ、純粋に母ジュノンを助けたいと思いその身を捧げようとする。そして、それがまたエリザベートを怒らせる‥。このようにアンリは、常にドラマを掻き回す中心に存在し、周囲に波紋を与えるキャラクターとなっている。

 他にも、この映画には幾つかの家族の関係が描かれている。
 その一つは、三男イヴァンと妻の冷えきった夫婦関係である。結婚に関する過去の秘密が明らかになることで、それが徐々に浮き彫りになっていく。
 もう一つ、アンリと新しい恋人フォニアの関係も描かれる。フォニアはユダヤ教徒である。アンリと一緒にやって来るのだが、キリスト教徒であるアンリの家族には中々なじめない。やがてアンリとの関係もギクシャクしていく。
 更に、この他にエリザベートの息子ポールの葛藤も描かれる。彼は自閉症気味な少年で常に孤独を抱えている。そんな彼が、やがて同じ骨髄移植の適合者であるアンリと細やかな交友を育んでいくようになる。母と複雑な関係にあるアンリにしか心を開けないという所が何とも皮肉的で、これには素直にしみじみとさせられた。

 このように本作は非常に広範な視座を持った群像ドラマとなっている。
 自分はこの奇妙に絡み合った人間模様を見ながら、家族の在り方について色々と考えさせられてしまった。一見するとベタな家族愛のドラマのように思えるが、さにあらず。実に豊饒な鑑賞感を残してくれる深みのある作品である。

 監督・共同脚本はA・デプレシャン。序盤のダイジェスト風なドラマ運びに性急さを覚えたが、それ以降はクリスマスを挟んだ数日間のドラマに限定されベテランらしい安定した語り口が貫かれている。説明的なセリフが無いため人によっては理解しずらい面があるかもしれないが、このミステリアスな語りこそデプレシャンの真骨頂であろう。後半に入ってくると、ある程度判明してくるので、それまでは我慢して見た方が良い。

 また、演出で少し面白いものが見られた。オーバーラップやスチールショットを駆使することで少し風変わりさを狙っている個所がある。その演出意図が何なのか。見ていて今一つ理解できなかったが、試みとしては面白い。

 音楽の使い方も独特だった。どう見てもシーンには余りマッチしないジャズを多用しているが、これも不思議な味わいがあった。賛否はあるかもしれないが、個人的には新鮮で面白いと思った。

 キャストではアンリ役を演じたM・アマルリックの演技が印象に残った。彼はデプレシャンの作品ではよく登場してくるが、今回のアル中、落伍者、甘えん坊というキャラ設定は正にハマリ役である。彼らしさがよく出ている。
 父アベルを演じた老俳優も中々に味わい深い演技を見せいていた。少し枯れしたような声で、それが”老い”の渋みを一層感慨深く見せていた。
[ 2014/12/23 01:02 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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