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「インターステラー」(2014米)
ジャンルSF・ジャンルアクション・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 近未来の地球。人類は食糧不足で絶滅の危機に瀕していた。元宇宙飛行士のクーパーは、宇宙に対する憧れと希望を封印し、現在は農場を経営している。ある日、彼の娘マーフが自分の部屋で異常現象が起こると言い出す。ひとりでに本棚から本が飛び出したり、砂嵐が部屋に入ってきて奇妙な暗号を残したり‥。クーパーはその暗号を辿って、解体されたはずのNASAの基地に辿り着く。そこでは人類の居住が可能な惑星を求めて宇宙のかなたに調査隊を送り込むミッションが計画されていた。クーパーはその飛行士に抜擢される。
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(レビュー) 人類の危機を救うために宇宙に旅立った父と彼の帰りを待つ娘の愛を壮大なスケールで描いたSF作品。
「ダークナイト」(2008米)や
「インセプション」(2010米)のC・ノーラン監督が満を持して放つ超大作と言うだけあって、宇宙の描写やクーパーが降り立った惑星の描写等、映像的な見所が尽きない作品である。まるで自分もクーパーと一緒にこの過酷なミッションに参加しているような、そんな臨場感が味わえた。広大な宇宙の迫力、ワームホールへのダイブ。どれをとっても、期待を裏切らない出来映えで、これだけのイマジネーションの体験はここ最近の作品ではなかった。映像だけでも一見の価値がある作品だと思う。
但し、ストーリーは色々と突っ込みを入れたくなる代物で、硬派なSF映画を期待すると裏切られてしまう。
第一に、NASAが誰にも知られずに地下で秘密裏に計画を実行するなんて出来るだろうか?予算はどうしているのか?スタッフはきちんと集まるのだろうか?という疑問を持った。しかも、月面着陸のねつ造を一言で片づけてしまういうあたり、かなり強引である。また、いくらクーパーが元宇宙飛行士だからと言ってアッサリと宇宙に飛んで行ってしまうのも説得力が無い。せめて、宇宙に出るまでの訓練等をダイジェストでいいから入れて欲しかった。回転する宇宙ステーションにドッキングする芸当も、もはや曲芸の域である。リアリズムは微塵も感じられない。
このように、作品の世界観に関してはお世辞にも良く出来てるとは言い難い。
ただ、父娘の情愛を描いた人間ドラマとして見た場合は、結構よく出来ている方だと思う。時空を超えた愛という所には素直に共感できたし、こうあって欲しいという所にドラマは巧みに運ばれていくのでカタルシスも十分ある。実にツボを心得たドラマ作りが成されている。
また、本作にはもう一つ大きな人間ドラマがあって、そこにも感動できた。今回のミッションにはクーパー以外に3人のスタッフが同行する。その中の一人、女性エンジニアのブランドとクーパーのロマンスの顛末にはしみじみとさせられた。ブランドの心中に迫る描写に甘さは残るものの、こちらも時空を超えた愛というテーマが語られ感動的である。
他に、今回のミッションにはTARSというロボットが同行する。初見時にはデザインが先鋭的で荒涼とした近未来の世界観には今一つそぐわない印象を持ったが、後半の活躍やクーパーとのやり取りが実に面白く、段々頼もしい存在に思えてきた。血の通わないロボットに人間臭さを絡めた発想も良い。
一方、どうしてもアクションシーンに不評が集まるノーランの演出だが、実は個人的にはそれほど下手な監督だとは思っていない。それよりも、彼はカットバックの演出が余り上手くない作家のように思う。「インセプション」の時にも思ったのだが、多層世界の戦闘を切り返しで見せる時の繋ぎが無頓着で、見る側に感情の振幅を過度に要求してくる傾向がある。二つのシーンを同時に盛り上げて、相乗効果的なドラマチックさを狙っているのだろうが、逆に下手をうっている。
今回で言えば、クライマックスのクーパーとマーフのカットバックである。クーパーが苦闘している所に、忘れた頃にマーフのフラッシュバックが被さり、緊張の糸が切れてしまう。
キャストは夫々に好演していると思った。最近、主演作品が次々とヒットを飛ばしているM・マコノヒーを筆頭に、ノーラン作品常連のM・ケイン等、堅実な演技を見せている。ただ、ブランドを演じたA・ハサウェイにはもう少し見せ場が欲しかった。先述のように、物語が彼女の心中に迫り切れていないため、今回は割を食ってしまった感がある。それと、意外な人物が中盤から登場してくる。映画を見るまで知らなかったのでこれには驚かされた。
音楽はハンス・ジマー。作品によっては抑制を効かせたスコアを作り上げる時もあるが、今回はいつもの悪い癖が出てしまったという感じである。全編に渡って流れる大仰なスコアが今回もヘビー・ローテーションされ自分の肌には合わなかった。曲自体は決して悪くないのに勿体ない。使いどころを見極めて欲しい。