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ばけもの模様

主婦の反乱を軽妙に綴った石井作品第4作。
ばけもの模様 [DVD]ばけもの模様 [DVD]
(2009/04/03)
大鳥れい、桂都んぼ 他

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「ばけもの模様」(2007日)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 幼い息子を事故で亡くした夫婦、順子と喜一の心は完全に離れていた。順子は息子の幻影に取りつかれてノイローゼ気味。喜一も会社のOLと不倫関係にあった。そんなある日、順子は買い物に出かけた時に、奇妙な恰好をした青年・世之介に出会う。彼はメロンパンの移動販売員をしている孤独な青年だった。メロンパンを売るために全身緑色のコスプレをしていて、それがなぜか順子の心を捉えて放さなかった。その後、二人はパンを焼く機械を乗せた販売車に乗って旅に出る。

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(レビュー)
 息子を失くした夫婦と孤独な青年の関係を独特のユーモアで描いたヒューマン・コメディ。
 監督・共同脚本は自主映画界の俊英・石井裕也。本作は彼の長編4作目にして最後の自主製作映画となる。

 物語は、前作「ガール・スパークス」(2007日)を彷彿とさせるような、女の”イライラ”を描くドラマとなっている。
 主人公・順子は、息子が死んだ現実を受け入れられず精神的に病んでいる。どうしてあの時助けてやることが出来なかったのか?どうして夫は無力なのか?そうした苛立ちと後悔の念を引きずりながら生きている。そして、溜まりに溜まったストレスは彼女を時々奇行へと走らせる。例えば、死んだ息子を探しに夜の公園へ出かけたり、鬼のお面を被って家事をしたり、カッパを探しに川へ行ったり、野球のバットで素振りをしたり等々。傍から見れば完全にカウンセリングを勧めたくなるレベルの精神的疾患者である。ちなみに、劇中ではこの”イライラ”を便秘に例えているが、このあたりにはいかにも石井監督らしい皮肉が感じられた。溜まった物はさっさと吐き出せということか‥。

 ただ、前作との共通点は幾つか見られるものの、こちらは主人公が成人した女性である。前作はティーンエージャーの成長ドラマだったが、こちらにはまた違ったテーマが用意されている。順子が息子の死を受け入れて再生していくという、いわゆる”喪の仕事”を描くドラマとなっている。これまでよりも少し大人びたドラマになっていて、そこが今回面白く見れる所だった。

 映画は軽快なテンポで進んでいく。精神的に病んだ順子は、ある日全身緑色のメロンパンの恰好をした販売員・世之介に出会う。世之介はパン屋のおばちゃんと暮らしている気の弱い童貞青年である。順子は彼を見て更に”イライラ”を募らせていくのだが、その一方で不器用な彼にどこか愛らしさも覚えてしまう。世之介の純粋さに失われた母性を開眼させたのか?あるいは、夫に対する反発、閉塞感に満ちた今の暮らしから脱出したいという思いがあったのか?いずれにせよ、順子は世之介と一緒に車に乗って旅に出る。

 映画はここまでコメディ・ムードで展開されていく。しかし、ここからが一筋縄でいかない石井作品の面白さで、映画はこの後に起こる”ある事件”によって徐々にブラック・コメディ的なテイストを含んだサスペンスへと転じていくようになる。このあたりは「反逆次郎の恋」(2006日)と似たような構成だと思った。悲喜劇の絶妙なバランスが中々上手い。エッジが効いたキャラクターがドラマを軽妙に見せている点も面白く、低予算ながらよく出来た作品だと思った。

 石井監督の演出はこれまで以上に洗練されている。独特のオフビートなタッチは今回も相変わらず面白いと思った。
 また、今回は死んだ息子のナレーションが時々挟まり、これがこの物語に奇妙な味わいをもたらしている。映画のラストを考えると、この不思議なナレーションの意味は改めて噛みしめられるのだが、この実験的な演出は予め計算された物なのだろう。感心させられた。
 また、短いシーンでバックストーリーを説明してしまう所にも上手さを感じた。例えば、喜一がコンビニで立ち食いをするシーン、夜の街を弘美と部長が腕を組んで歩くシーン。このあたりにはベテランのような手際の良さを感じた。

 一方で、今回も不用意なシーン、シュールなギャグ演出が幾つかあり、このあたりは今一つ自分の肌には合わなかった。例えば、石井監督は必ず自作にチョイ役で出演するが、今回の役柄については全く意味不明、且つドラマ的に何の意味も持たないキャラである。明らかに不要であろう。
 また、終盤のサスペンス展開におけるパン屋の叔母ちゃんの存在感の薄さも気になる所だった。順子と部長が公園で戯れるシーンもシュールすぎて受け付けがたい。

 キャストでは、これまでの石井作品の常連・桂都んぼが世之介役に抜擢されている。今までも脇役で強烈な印象を残していたが、今回は堂々の準主役である。中々良い味を出していた。
[ 2015/01/20 19:42 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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