ドラキュラ映画の代表作!
「吸血鬼ドラキュラ」(1958英)
ジャンルホラー
(あらすじ) 弁護士のハーカーは、トランシルヴァニアの森深くに住むドラキュラ伯爵の屋敷を訪れた。彼はドラキュラの正体を吸血鬼と知って退治しに来たのだ。ところが、逆に血を吸われて仲間にされてしまう。ハーカーの友人で医師のヘルシング博士は不審に思い彼の後を追った。しかし、手掛かりを掴めずハーカーの婚約者ルシーを頼った。彼女はハーカーの失踪に焦燥しきって、ろくに話すことも出来なかった。その晩、ルシーの前にドラキュラが姿を現す。
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(レビュー) 有名なブラム・ストーカーの怪奇小説2度目の映画化。
尚、一度目はベラ・ルゴシが主演したモノクロ時代の作品
「魔人ドラキュラ」(1931米)である。1作目はアメリカのユニバーサルで製作されたが、今回はお膝元のイギリス、ハマー・フィルム・プロダクションによる映画化である。ハマー・プロは怪奇映画を専門に作っていた会社で、主に50年代後半から60年代にかけてドラキュラ、フランケンシュタインという2大シリーズを量産してヒットを連発させた。今回の映画はその先駆けとなったドラキュラ・シリーズの第1弾である。
ストーリーはお馴染みの展開で進んでいく。ただ、以前見た「魔人ドラキュラ」に比べて、かなり設定が簡略化されている。例えば、ハーカーが初めからドラキュラを退治しようと屋敷に乗り込んだり、ヴァン・ヘルシングをハーカーの友人という設定にして事件に絡ませたり等、様々な点でストーリーのスピード化が図られている。
また、所々にユーモアが配されていてエンタテインメント性が強調されている。例えば、葬儀屋のキャラクターがコメディ・ライクに造形されているのは中々面白かった。
映像については「魔人ドラキュラ」よりもこちらの方に見応えを感じた。モノクロからカラーになったことによって恐怖演出が格段にアップされている。
例えば、冒頭のシーン。棺に鮮血が垂れるカットなどは中々刺激的で、映画の導入としてはこれから始まる惨劇をかなり期待させる。
また、ゴシック調なドラキュラ邸にも見応えを感じた。今作の上映時間は約80分である。これは、いわゆる当時のB級映画の平均的な上映時間と大体同じである。B級映画というと作りが安っぽく見られがちだが、本作は他の映画とはちょっと違う。美術、照明共にクオリティが高く全体的に画面が豪華に見える。森の中を馬車が疾走するシーンも不気味な雰囲気がよく出ていて、全体的にB級っぽさが感じられない。
特撮も低予算ながら中々頑張っていると思った。中でも、ドラキュラの絶命を描くクライマックス・シーンは、今作最大の見せ場であり映像的にも一番派手である。確かに今見ると朴訥とした感は否めないが、製作された時代を考えれば良く出来ている方だろう。
逆に、「魔人ドラキュラ」にあって今作に無いのは、ドラキュラの目のクローズ・アップである。「魔人ドラキュラ」のベラ・ルゴシの目は実に強烈だった。そのインパクトが本作には無い。
これは演じる俳優の資質の違いに関係していると思う。今回ドラキュラを演じたのはクリストファー・リーである。彼は怖いと言うよりもスマートという印象が目立ってしまい、恐怖のオーラが不足気味である。元々顔が端正であるし、イギリス出身の俳優らしく独特の気品も感じられる。リーにはルゴシのような怪奇性は余り感じられない。このあたりは好みという気もするが、個人的には「魔人ドラキュラ」のルゴシの方に恐ろしさを感じた。
もっとも、俺の世代になると、やはりドラキュラ役と聞いて真っ先に思い浮かべるのはクリストファー・リーの方になってしまうのだが‥。ドラキュラ役を長く演じていたということもあろう。
一方、ドラキュラの天敵ヴァン・ヘルシングを演じるのはピーター・カッシング。ドラキュラ役のリーと共にハマー・プロを支えていくことになるが、こちらはクールな面持ちで堅実な演技を見せている。
特に、ドラキュラの犠牲になったルシーの胸に木の杭を打ち込むときの振る舞いは印象深い。ルシーの兄の静止を物ともせず、ためらわずに杭を打ち込む。実に容赦ないが、そこに後の”吸血鬼ハンター”として当たり役になっていく”頼もしさ”みたいなものを感じた。彼もリーのドラキュラ同様、今作をきっかけにヘルシング役を演じ続けることになる。