独特のユーモアと色彩感覚が面白い。
「妖婆 死棺の呪い」(1967ソ連)
ジャンルホラー
(あらすじ) 中世のロシア。修道院で神学に勤しむ学生たちが休暇で帰省することになった。その中の一人ホマーは、旅の途中で魔女の館に引き込まれる。恐怖の余り魔女を殺害したところ、その死体はすぐさま若く美しい娘に姿を変えた。その後、ホマーはある村の地主に招かれて亡くなった少女の祈祷を依頼される。棺の中を見たホマーは驚く。それは自分が殺した、あの娘だった。
ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 青みがかった独特の色彩感覚とブラック・ユーモアで綴るソ連製ホラー。
原作は文豪ゴーゴリの古典である。どこか牧歌的な香りを漂わし、怖いというよりもクスクス笑いながら見れる奇妙な味わいを持ったホラー作品である。
物語は中盤でホマーが地主の娘を祈祷するあたりから徐々に盛り上がっていく。その娘は自分が殺した少女と瓜二つだった。この不条理感はミステリーを際立たせていて面白い。こうして仕方なく彼は娘の遺言に従って三夜に渡って祈祷することになるのだが、当然ただでは済まない。棺から蘇った娘がホマーを襲い始める。
白眉はクライマックスある。どうにか結界を張ってホマーは娘の呪いをやり過ごすのだが、最後の晩。つまり3日目の夜、ついに結界は破られる。部屋の壁から大量の魔物たちが現れてホマーめがけて一斉に襲い掛かってくる。この特撮は今見ると確かにチープなのだが、異形のクリーチャーたちが画面のこちら側にウヨウヨと迫ってくる光景は中々恐ろしいものがある。これは幼い頃に見たら、きっとトラウマになっていただろう。
また、ホマーが旅の途中で出会う魔女の造形も中々に良かった。演じる老婆の顔立ちが、いかにも魔女!という風貌で良い。特殊メイクで出そうとしても中々出せない味がある。
それと、ラストのオチも人を食っていて良かった。良いホラーには必ず教訓が込められているものであるが、今回のラストには”宗教への不信”が読み取れた。少々罰当たりなオチであるが、皮肉が効いている。