意外な展開で魅せる後編。
「魔法少女まどか☆マギカ[後編]永遠の物語」(2012日)
ジャンルアニメ・ジャンルファンタジー・ジャンルアクション
(あらすじ) キュゥべえと契約して魔法少女となったさやかは、信念を貫き他人のために戦おうと決意するが、無茶な戦いに身を投 じて破滅してしまう。しめやかに行われるさやかの葬儀。参列したまどかは悲しみに暮れる。そして、そんなまどかの前にキュゥべえが現れる。さやかの死を冷たく語る姿に怒りを覚えるまどか。その態度を理解できないキュゥべえは、自分たちと人類が歩んできたこれまでの歴史を語りだす。
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(レビュー) 2011年にTV放映され、斬新なストーリーと可愛らしいキャラで人気を博したアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の劇場版。総集編の後編である。
この後編から、いよいよまどかはキュウべえと契約して魔法少女になって戦う。物語のクライマックスとなるワルプルギスの夜との戦いは後半部分の大きな見所で、迫力の戦闘シーンにはかなりの見応えを感じた。
そして、このクライマックスでは、前編の冒頭でまどかのクラスに転入してきた魔法少女ほむらの、”ある秘密”も明らかにされる。これまで常にまどか達と対立関係にあった彼女には、そうしなければならなかった理由があった。それが彼女自身の口から告白されるシーンは、自分もTVシリーズを見てて一番引き込まれた部分だった。正に予想だにしなかった展開であり、物語のボルテージも一気に加速されていく。魔法少女に課せられた呪われた運命、劇中では”因果”という言葉で表現されているが、その運命に向って綺麗に収束していく所にカタルシスも覚えた。
ただ、キュウべえの正体が明確にされなかったことには少し不満も持った。一応、劇中では”インキュベーター”という言葉で説明されているが、宇宙の破壊と再生という大掛かりな仕掛けを達観した物言いで語る彼らは一体どの宇宙から来た生物だったのだろうか?今一つ判然としない。奥歯に物が挟まったような、そんな印象を持った。
もっとも、そこは敢えて観客の想像に委ねた‥と捉えられなくもない。当然彼らの正体が判明してしまえばこの物語はそこで終わってしまう。作品世界はまだまだ続く‥という見る側のロマン。それを残す意味でも、キュウべえの正体は伏せておいたのだろう。
一方で、最終的にここまで壮大な話になってしまうと、若干付いていけない‥というのもあった。終盤に及んで宇宙の破壊と再生などと言われても、まどかにしてみれば正に突然降ってわいたような話であり、当然ストーリーの進行上、そこの部分は全て説明セリフによる”語り”に頼らざるを得なくなってしまう。延々と続く説明セリフほど、物語への没入を削いでしまうものは無い。終盤が性急な展開になってしまったのが惜しまれる。
更に、今回は演出面で引っかかる箇所が幾つかあった。途中で挿入されるTV版のオープニングは、ストーリーを完全に分断してしまっている。不要な演出に思えた。
また、クライマックス直前、まどかが母親と別れるシーンが描かれているが、ここでのBGMも不似合に思えた。むしろここは戦いに望む緊張感を盛り上げるべきであって、親子の情愛というメロウさを狙ったBGMを被せるよりも、淡々と紡いだ方が良かったのではないだろうか。また、まどかの母と担任教師がバーで語らうシーンも何だか唐突に思えてしまった。二人が知り合いだったという説明が予めされていたならまだしも、そういったシーンは無かったように思う。
そんなわけで、後編は前編に比べると明らかに作りが粗い。これは上映時間の短さに関係しているのかもしれない。前編は約120分だったのに対し、この後編は90分しかない。シーンが唐突に写ってしまうような箇所があるのは、全体のストーリーが切り詰められたことによる弊害だろう。そうかと思えば、不要なオープニングが挿入されるなど理解に苦しむ演出もある。この後編は全体的にチグハグな作りに思えた。出来ればこちらも120分くらいかけて丁寧に作って欲しかった‥というのが正直な感想である。
ただ、ドラマ的にはこの後編にこそ見るべきものが多いことは確かである。前編は、まどかの葛藤を深く掘り下げる作劇に終始し、カタルシスは皆無である。一方、後編は、ほむらの葛藤を絡めることで、まどかの覚醒というテーマが見事に昇華されるに至っている。やはり感動という点ではこちらの方が深く味わえる。
尚、映画のエンディングの後には、続きを期待させるような新しいシーンが追加されている。これは第3作[新編]に繋がる序章となっている。