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ノーカントリー

シガー怖いよ、怖すぎるよ!
つーわけで、ちびりそうになりました「ノーカントリー」。
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「ノ-カントリー」(2007米)星4
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ)
 1980年代、テキサスの荒野。狩りをしに来たモスは偶然死体の山を発見する。傍には麻薬と大金があった。彼はその金を持って帰宅した。しかし、その夜現場で虫の息だった男のことがどうしても頭から離れなかった。仕方なく助けようとして現場に戻ったのが運の尽きである。麻薬組織に見つかり追われる身となる。組織は残虐非道な殺し屋シガーを送り込んできた。シガーはモスを狙いながら途中で次々と殺人を繰り返していく。そんな二人を老保安官エドが追いかける。
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(レビュー)
 原題は「NO COUNTRY FOR OLD MEN」。老人が住む国はもう無い‥といったような意味だが、これは老保安官エドの心理を表している。この原題から本作のテーマは自ずと分かってくる。年配諸氏がよく使う言葉に「今の若い者は‥」という決まり文句があるが、それとニュアンスがよく似ている。この映画のテーマは正にオッサンの嘆き節だ。

 モス、シガー、そして後半に登場するもう一人の殺し屋ウェルスはいずれもベトナム帰還兵である。ここにアメリカ特有の世代隔絶の意味するところ、時代の変換点が見られて面白い。
 いわゆる60年代後半のヒッピームーブメントは、それまでの世代が敷いたルールとは完全に対立したものだった。若者達はドラッグやフリーセックスに興じ、大人達が言う良識に反抗した。そして、ある者はベトナムへ出兵し、ある者は反戦運動へと参加していく。エドにとってみればシガー達、ヒッピームーブメント世代の行動が理解できないのは当然であり、もはや「NO COUNTRY FOR OLD MEN」というわけである。ベトナム戦争を一つの象徴として忍ばせた所はいかにもアメリカ映画らしいと思った。

 そして、ここがこの映画の鋭い所だと思うのだが、エドから見たこの病んだ社会は実は現代の混乱した社会を見事に暗喩しているのではないか‥ということである。
 イラク戦争、格差社会、無差別殺人等。これだけ暗く救いの無い社会を見れば、このドラマのエドのように嘆きたくなるアメリカ人は大勢いるのではないだろうか。むしろ状況は悪化の一途を辿っているという気さえする。この物語を現代アメリカ社会の合わせ鏡として見ると、映画が伝えるメッセージを更に深く読み取くことが出来る。

 監督はコーエン兄弟。映画の作り自体はサスペンスとバイオレンスが盛りだくさんで娯楽性が高い。何よりシガー役を演じたJ・バルデムの殺人鬼振りが恐ろしく、彼が画面に登場するだけで見ているこちらの心拍数が上がってしまった。初めこそビジュアルの滑稽さに笑ってしまったが、段々笑うに笑えなくなってくる。それほどの怪演振りだった。

 また、コーエン兄弟の作品らしく独特なブラックユーモアも見られる。ただ、バイオレンス描写が余りにも露骨で、笑いもどこかに吹き飛んでしまうことも確かである。コーエン作品は悲劇を題材にしてもどこかでほのぼのとした味わいがあるのだが、本作にはそれが一切感じられなかった。今までで一番彼らの「陰」の部分が強く出た作品だと思う。
・ノーカントリー@映画生活
[ 2008/04/04 19:49 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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