fc2ブログ










シチリア! シチリア!

激動の時代を生き抜いた男の半生を壮大なスケールで描いた人間ドラマ。
シチリア! シチリア! [DVD]シチリア! シチリア! [DVD]
(2013/06/28)
フランチェスコ・シャンナ、マルガレット・マデ 他

商品詳細を見る

「シチリア!シチリア!」(2009伊仏)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 イタリアの田舎町バーリア。少年ペッピーノは愛する家族に囲まれながらすくすくと成長した。やがて第二次世界大戦が勃発すると、生活費を支えていた兄が出兵し、暮らしはこれまで以上に厳しいものとなる。ペッピーノは抵抗運動に参加しながら戦乱の世を生き抜いた。数年後、戦争が終結すると、彼はマンニーナという女性と出会い恋に落ちる。しかし、この交際に彼女の両親は反対だった。止む無く二人は駆け落ちするのだが‥。

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ

(レビュー)
 あるイタリア人の半生を描いた大河ドラマ。

 監督はイタリアの巨匠G・トルナトーレ。トルナトーレと言えば、名作「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989伊仏)を真っ先に思い浮かべるが、彼の作風は大きく分けて二つのタイプがあるように思う。感動的なヒューマンドラマと、ミステリー系のサスペンス映画である。「ニュー・シネマ・パラダイス」などは前者のタイプに属する作品である。一方、昨年鑑賞した「鑑定士と顔のない依頼人」(2013伊)などは、メロドラマをメインとしながらも、顔の見えない相手に恋をするというミステリアスな作りになっていることから、どちらかと言えば後者のタイプに入る作品のように思う。
 このように、G・トルナトーレという作家は全くタイプの異なる二つの作家性を持った監督なのである。

 さて、そこでいくと今回の作品は、どこからどう切っても前者に分類できる作品である。ただし、ペッピーノがコミュニストになっていくあたりに政治ドラマ的な趣向が入ってくるので、「ニュー・シネマ・パラダイス」のようなメロウさは控えめである。イタリアの政治、歴史といった背景が、ドラマを語る上では重要な素材となっており、幾分”固め”に作られている。

 まず、面白いと思ったのは映画のオープニング・シーンである。少年が走りながら徐々に空中を駆け上がっていき、空を飛んで学校に辿り着く。少年はそのまま職員に招き入れられて薄暗い教室に入っていく。そして教室の片隅に座るのだ。開始早々、何とも摩訶不思議なシークエンスだが、これから一体何が始まるのか?という期待と不安を持たせてくれるオープニングで中々面白い。そして、これもトルナトーレ監督の特徴の一つと言えるが、彼はああ見えて実はシュールレアリスティックな作家でもあるのだ。氏の作品「みんな元気」(1990伊仏)のようなトーンと言えばいいだろうか‥。それがこのオープニング・シーンにも見られる。

 ちなみに、このオープニングはラストにそのまま継承されている。この入れ子構造の構成は、あたかも全体のドラマを寓話のように見せていて中々面白い。

 全体的にストーリーは軽快に進行していく。但し、前半はかなり上滑りする内容で、ややダイジェスト風な作りになっている。物語の本文はペッピーノが青年になって以降からで、映画はここからじっくりと腰を据えて語られるようになる。

 そこで描かれるのは戦争体験、政治闘争、マンニーナとの出会い、家族との軋轢といった内容である。様々な問題がペッピーノを苦しめていく。そして、こうした苦難を乗り越え、愛する家族と触れ合うことで、彼はどんな苦境に立たされても立ち向かっていくだけの強さを得るようになる。その波乱に満ちた人生は実に面白く見れた。

 所々のユーモアも気が利いている。終戦の混乱に紛れて金庫破りをするシーン、教会の聖画を巡る反復エピソード、ペッピーノの兄・ニーノと薬屋のやり取りは中々秀逸だった。

 また、今回の物語はイタリアの動乱を背景としているだけあって、映像にも見応えが感じられた。例えば、マフィアが牛耳る土地を市民に解放するよう、ペッピーノたちが決起するシーンは、大量のモブを起用しながらスペクタクル感溢れる映像に仕上げられている。
 あるいは、3つの大きな岩が立った丘の景観の美しさも素晴らしかった。今作は大自然の美観も一つの見所である。

 キャストでは、主役を演じた男女の佇まいが中々に良かった。両者ともイタリア人らしい目鼻立ちがはっきりとしたタイプのイケメン&美女で、クラシカルな面持ちを備えた所も良い。いずれも今回が映画初出演ということである。

 クラシカルと言えば、一部の映像にそれを狙ったようなシーンも見つかった。中盤でペッピーノとマンニーナがダンスをするシーンが出てくるのだが、これなどは色のコントラストを強調しながら敢えて一昔前のような映像に仕上げられている。意図しているのかどうかは分からないが、面白い映像演出だと思った。
[ 2015/03/03 00:23 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1381-3c70e019