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クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立

謎の伝染病が蔓延した世界を舞台にしたシュールなSF作品。クローネンバーグの作家性の萌芽が見て取れる。
「クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立」(1972米)星3
ジャンルSF・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 近未来。ルージュ病という謎の伝染病が発生し人類は絶滅の危機に瀕していた。この病気は主に成人女性がかかり、体内に正体不明の臓器を作り出して死に至らしめるのだ。皮膚研究所に勤務するトライポッド博士は、これを調査するうちに、ある謎の団体に辿り着く。

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(レビュー)
 D・クローネバーグが製作・監督・脚本・撮影を兼ねて自主製作したSF作品。本作は彼の監督第2作目となる。

 謎の伝染病を追いかける科学者が倒錯的な世界に迷い込んでいく寓話で、ある種、氏の中二病的性癖が炸裂した作品となっている。

 処女作「ステレオ/均衡の遺失」(1969カナダ)同様、内容が抽象的で分かりづらい。一応、トライポッドがルージュ病の謎を解き明かすべく、ある組織に侵入していく‥という体で物語は進んでいくのだが、最後まで見ていないと一体何について描いている物語なのかまったく分からない。というのも、バックにはナレーションと異様なSEが流れるのみで、BGMもセリフもないのである。誰が、何のために、何をしようとしているのか?といった必要最小限の情報が中々提示されないため、見ててかなりイライラさせられる作品である。観客の感情を誘導しようという演出も皆無で、淡々と進むのも退屈する。
 また、自主製作ということで予算も少ないのだろう。世界規模の伝染病に対する恐怖を描いている割に、作品の世界観はミニマムに設定されている。

 ただ、こうした稚拙で難解な部分はあるのだが、本作の重要なモティーフになっているルージュ病という伝染病。これについては中々面白い設定だと思った。これによってクローネンバーグが本作を通して何を訴えようとしたのか?それを探っていくことは面白い。

 この病気は何が原因で発症するのか明確にされていない。主に成人した女性がかかり、体内に変化を及ぼすということだけは分かっている。その際、白い分泌液が耳や口から出るのだが、この白い分泌液が一体何を表しているのか?何となくエロティックな物を自分は想像してしまった。

 この映画の中では、他にも様々なフェティッシュな変態行為が出てくる。足フェチや皮膚フェチ、愛童フェチ等々。こうした眩惑的な性の倒錯は、クローネンバーグの一連の作品には数多く登場してくるガジェットである。言わば”見世物映画”としての醍醐味にもなっている。
 例えば、彼の名前を世に知らしめるきっかけとなったカルト作「ヴィデオドローム」(1982カナダ)、自傷行為でしか性的興奮を得られないカップルの破滅的愛を描いた問題作「クラッシュ」(1996カナダ)等々。人知を超えた所まで昇り詰めていく異常な快楽追求の物語は、彼の作品の中には結構多く見られる。その源泉をこの映画の中に見ることが出来た。
 尚、ビニール袋を使った人体実験(?)が出てくるのだが、これだけは一体何を意味しているのか自分にもまったく意味不明だった‥。

 更に、ここで描かれている”肉体の変異”と”社会の絶望”というテーマも、やはり後のクローネンバーグ作品に必ずと言っていいほど出てくるテーマの一つと言っていいだろう。例えば、初の商業用作品「シーバーズ」(1975カナダ)、あるいは「ラビッド」(1977カナダ)、「イグジステンズ」(1997カナダ英)といった作品にも、このテーマは継承されている。正にクローネバーグ作品に欠かせぬ重要なテーマの一つであり、それを本作の中に確認することが出来た。

 つまり、クローネンバーグが本作で何を訴えたかったかというと、一つのウィルスによって余りにも無慈悲に破壊されてしまう人間の肉体と社会、その未来図なのだと思う。これは彼の作品に繰り返し出てくるテーマなので、それを知っていると一見難解と思われるこの映画も非常に理解しやすくなってくる。

 このようにクローネンバーグという作家の資質を知っていれば、今作は思いのほか面白く見ることが出来る作品のように思う。但し、彼の作家性を知らなければ、何を言いたいのか分からない‥という感想を持つ人が大半であろう。
 ということで、彼のファンなら一件の価値はあるが、それ以外の人には余りオススメできない作品である。
[ 2015/03/11 00:40 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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